フィンランドのデベロッパー”oeksound”から、適応型トーンシェイパー「bloom」がリリースされました。
「soothe2」がレゾナンスサプレッサーの定番ツールとなって久しく、今や、なくては困るプラグインNo1と言っても過言ではない評価を得ています。
今回紹介する「bloom」もsoothe2に続く必要不可欠プラグインになるであろうと、個人的にはそういったポテンシャルを感じました。
では早速レビューしていきます。
bloom
メインセクション
「bloom」は適応型(=アダプティブ)トーンシェイパーと呼ばれてまして、ここからしてなんぞや?っとなってしまうかもしれないのですが、”適応型”とはつまり、素材に応じた調整を施してくれる、いわゆる自動処理の部類になります。
そしてトーンシェイパーとは、音色(トーン)を整形(シェイプ)するもの。つまり素材に応じて音色を自動的に整音してくれるかつ、自分でも整形できるプラグイン、ということになります。
既存プラグインではsoundtheory Gullfoss や、iZotope Ozone付属のClarityがアダプティブ動作なので似た性質ですが、それらと「bloom」を差別化するポイントの一つは、”squash”と呼ばれるダウンワード+アップワードコンプが搭載されていることです。
エフェクト量を調整する”amount”が、7.0以上の時に”squash”が動作するのですが、その掛かり方はかなり強めで、Xfer OTTに近いイメージです。
「bloom」の面白いところは、アダプティブな優等生的補正動作と、過激なコンプレッションが同居しているところにあると思います。
“squash”の細かい調整は行えませんが、”squash cal”(キャリブレーション)にてスカッシュ域に届く信号の大きさを調整できます。
[set]ボタンで入力レベル(LUFS)に応じて最適なキャリブレーション値が自動設定され、適切なsquash動作を得れる、というものです。(手動設定も可能)また、全体の挙動についてはattack/releaseがあり、値を小さくすると補正の動きが機敏になり、値を大きくするとゆるやかな挙動になります。
処理状況が確認できる処理グラフには、上限下限の範囲設定と包含/除外モードの選択と、18dB/oct固定のハイパス/ローパスフィルターがついており、上部にあるトーンコントロールエリアと合わせて音質調整に使用します。
トーンコントロールエリア
トーンコントロールエリアは4バンドのスライダーになっています。各バンドの中心周波数を設定してブースト/カットできますが、ここでのブースト/カットはdB単位ではなく、参考値となっていて独特な挙動になります。
強調度を調整しているイメージで、例えば”lo-mids”をブーストすると他の帯域よりローミッドを強調しつつアダプティブに整音されたサウンドになります。
EQやマルチバンドコンプのブーストと決定的に違う部分は強調しつつも整音されてるかどうか、と思います。
プリセットを聞いてみると結構攻めた調整もできるようで、トーンコントロールの使いこなしが重要になってきます。
使用感や音質について
“amout”が3.0〜5.0だと自然な掛かり方でフラットな特性に近くなります。この変化が自然なので、変化を聞き取るのが難しい場合もあるのですが、ミックス全体の中で確認すると不思議と整っている、そんな印象でした。
“amout”が5.0以上だと補正というよりトーンシェイプの色合いが強くなり、自分好みの音に仕上げるためにトーンコントロールを積極的に使うことになると思います。
競合になるであろうsoundtheory Gullfossと挙動を比較すると、Gullfossのキビキビした挙動よりもより自然な挙動で補正できるbloomの方が全体の質感を調整するには向いてるように思いました。
逆に局所的なピーク/ディップ対するカット/ブーストはグラフ解像度の高いGullfossの方が向いてそうです。
ただ、bloomの解像度が低いということではなく、恐らく内部的には細かい範囲でカット/ブーストが行われていますがグラフとして見せる分には、トーンコントロールの操作性を優先して解像度を低く表示しているだろうと思われます。
また、前述で「自動的に整音してくれるプラグイン」と紹介しましたが、bloomの強みは自動処理よりも自分でトーンシェイプできる柔軟性にあるように思いました。
逆に言うと、全ておまかせしてOKというものではなく、トーンコントロールがフラットな状態での補正は、素材によっては合わないこともあります。
ただそこから目的のバランスに向けてトーンコントロールで調整すると、劇的にバランスが改善しています。
使い方が分かってくるとかなりスムーズにバランシングできますし、全体的な方向性は自分が決めて、細かい部分はプラグインがやってくれるというある種、理想的な操作性を実現しているように思いました。
CPU負荷
「bloom」は”quality”にてnormal、high、low latencyの切り替えが可能で、highモードは解析解像度が上がるのでミックスバスやマスターなど複雑な素材に有効です。low latencyモードは主に掛け録り用途になります。また、M/S splitやL/R splitを行うと負荷が増えます。
normalモードで1個インサート時のCubase負荷は5~10%程度、highモードでは10〜20%程度でした。
- OS : macOS Sonoma 14.1
- CPU : Mac M2 12コア
- メモリ : 64GB
- DAW : Cubase Pro 12
- バッファサイズ : 2048samples
- サンプリングレート : 48kHz
- ビット解像度 : 32bit float
- オーディオIF : Prism Sound Lyra1
まとめ
複雑な内部処理を有してる本製品ですが、操作できる部分は限られているので全貌を理解していなくても感覚的に音作りができます。
素材を選ぶこともないですし、使えば使うほど可能性が広がるような柔軟性を持っている、長く付き合っていける製品だと思います。