ボーカル特化のAI技術で録音環境に関係なくスタジオ品質に仕上げる、SONIBLE prime:vocalレビュー

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smart:EQやsmart:compなどAIアシスト製品が人気のSonibleから、ボーカルトラックを録音環境に関係なくスタジオ品質に仕上げる「prime:vocal」がリリースされました。

インテリジェント・ボーカルエンハンサーと呼ばれるprime:vocalは、ノイズ除去などクリーンアップ処理とレベラー、コンプ、帯域バランス調整などが組み合わさったツールです。

自宅環境やスマホ録音など環境的に問題がある場合でもシンプルな操作で簡単にスタジオクオリティにできるとのことで、既存のノイズ除去ツールとはどういった違いがあるのか気になるところだと思いますので、その辺りもレビューしていきたいと思います。

prime:vocal

prime:vocalの大きな特徴として、スタンドアロンもしくはARAで使用することになります。

また、現時点でARAはベータバージョンとのことです。

動作状況についてはSonibleのサイトにてARA動作の詳細が記載されているので、ARA使用を検討している方はチェックしておいたほうが良いですね。

(https://help.sonible.com/hc/en-us/articles/17467082409372-What-are-the-known-issues-and-Limitations-for-ARA-Beta-version-of-prime-vocal)

スタンドアロン使用時は、起動してボーカルデータを読み込ませると、解析が始まり編集可能になります。

ここでいきなりですが、prime:vocalの最大の懸念点といえる部分を最初にお伝えしますと、読み込み時の解析に思ったより時間が掛かります。

例えば3分のデータを1つ読み込ませると1分30秒ほど、3分のデータを3つ同時に読み込ませると合計で3分ほど解析に時間を要しました。

ここまで時間が掛かってしまうのは、恐らくAI解析で複雑なノイズプロファイルをしていることと、各モジュールをリアルタイムで調整できる「非破壊処理」であることが原因と思われます。

ただ、この解析時間され許容できれば、デフォルトの状態でもかなり綺麗にトリートメントされていて、解析後に細かく編集する必要がないので、従来のノイズ除去ツールで手動で設定を探っていくよりも結果的に処理時間が短くなることもあると思います。

prime:vocalのコントロール部分は主に5つモジュールがありますが、調整できる部分は敢えて制限していると思われ、かなりシンプルです。

自由度は少ないですが、その分AI解析が優秀なのでトリートメント用途としては充分といえます。

Noise Reduction:バックグラウンドノイズ、クリックノイズ、電気ノイズなどの除去に加え、マイクブリード除去も可能とのこと。例えばヘッドホンから漏れたインストの音を除去することもできます。

Room Reduction:部屋鳴りの軽減。最適とは言えないレコーディング環境において、ルームサウンドを検出し可能な限りクリーンに除去するよう特別にトレーニングされているとのこと。

Vocal Clean-Up:De-Essing(歯擦音)とDe-Plosive(破裂音)。それぞれ3段階+Noneの強度設定が可能。

Spectral Balance:ProfileとColourでトーンバランスを調整。Profileでは録音タイプに応じて4タイプから選択、Colourでは3タイプのトーンを選択できます。

Dynamics:Level Ridingで平均レベルを調整、Compressionダイナミックレンジを縮小できます。Clean-Upと同様それぞれ3段階+Noneの強度設定が可能。

使用感、他社製品と比較

繰り返しになりますが、最初の解析時間さえ許容できれば、かなり使い勝手の良い製品に思います。

筆者はノイズ除去ツールに某I社製品を愛用していますが、ノイズ量が多かったりいろんなノイズが入り混じってるデータだと除去に結構な時間を使う場合もあるのですが、prime:vocalだとデフォルト設定でもほぼ問題ない状態になるので、作業負担の軽減になると感じました。

特にのノイズリダクションとデリバーブの感触が良く、バックグラウンドノイズだけでなくブリード音も精度も高く綺麗に除去してくれます。

他社製品のデブリードは元となるインストをプロファイルさせる必要があったりしますが、prime:vocalはその必要もなく、かなりお手軽にできるのが強みです。

デリバーブも他社製品では声の成分まで取れてしまうことがありますがprime:vocalは自然に軽減できてる印象でした。

ダイナミクスについてもクリーンに整ってくれるので後の手間も省けますし、総合的には非常に強力なツールだと思います。

CPU負荷

かなり軽いです。ARA使用時で3〜5%程度ですが、基本的に編集が終われば書き出すことになると思うので実質負荷を感じる場面はほとんどないといえます。

  • OS : macOS Sonoma 14.1
  • CPU : Mac M2 12コア
  • メモリ : 64GB
  • DAW : Cubase Pro 14
  • バッファサイズ : 2048samples
  • サンプリングレート : 48kHz
  • ビット解像度 : 32bit float
  • オーディオIF : Prism Sound Lyra1

まとめ

クリーンアップやトリートメントの品質は流石のSonibleクオリティです。

操作性に関してもSonible製品に初めて触れる方でも扱えるシンプルな操作性で、逆にシンプルすぎてう少し拡張性があっても良いかもしれないと思えるほどでした。

ボーカルトラックのノイズに困っている方や、下処理を効率化したい方にはおすすめできる製品です。

prime:vocalの詳細はこちら

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