Sponsored By Pulsar Modular
普段コンピュータ上で音楽製作が完結している若い世代の音楽家にとって、アナログ機材というものは憧れの存在であったり、自分の製作がプロのようにならない原因だと思ったり、中には懐疑的な印象を受けている人もいるかもしません。
もちろん、それぞれの感じ方は人それぞれですが、私個人の考えとしては、アナログだから、デジタルだから、というようなスプリット的な考えはもはや存在しません。全てはアナログの魔法と呼ばれた現象を深く理解し、制御することが大事だと思います。
P42 Climax
概要
今回紹介するのは Pulsar Modular – P42 Climax というプラグインです。
このプラグインは一応アナログモデリングという位置づけですが、ただのモデリングプラグインではありません。
モデルにしてるのは「トランス」であり、イクイプメントでもないということ。
Triad A-11/12J というトランスがモデリング元であり、P42 はそれを更に実用的に使いやすくモジュール化したような製品、プラグインのカテゴリ的には歪み系、サチュレーションの類であります。
性能
このプラグインは実際には自由度が高いため、全体的に機能を把握しておくと便利な場合がある。
OS、TX、Dual Mono、Mid Side 単独処理、Filter や Shelving、Air といった EQ 部、そしてサチュレーションを司るトランスセクション。
それぞれの実用的な解説や使い方の目安などは動画で解説しているので、そちらをご覧ください。
重要なのはこのプラグインの機能がすごいのではなく、使う側の意図に素直に答えてくれるプラグインの設計だと思います。プラグインを使うことが目的ではありません。自信が目標にしている音像に到達するためにアプローチを提供してくれます。
サチュレーションとは
私個人の意見として、エンジニアが完全に制御していく必要性があると感じる項目が歪み、サチュレーションと呼ばれる事象です。
EQ や コンプレッサーなどは数値が数学的に決められている場合は、完全にデジタル制御出来ます。しかし、アナログ機材を使ったときの歪みというものは基本的にはコントロールができません。(もちろん Input と Output レベルで調整はできるけど完璧ではない。)
そのため、昨今のデジタル製作において歪みをコントロールすることがモダンアプローチとなっている気がします。
歪み特性についてはここで語ると、眠たくなると思うので、本気で音楽的にアプローチを研究したいという方は以下をご参考ください。
歪みには、アナログ領域では全く発生しないけど、実際にはデジタル領域で考慮しなくてはいけないいくつかの数学的な問題があります。
そのために多少の予備知識が必要になります。詳しくは折返しノイズやエイリアシングノイズでご検索下さい。
歪みのコントロールとノイズの回避を行いつつ、仕上げる必要性があり、それらをエンジニアが満足できるレベルで調整できるのがこの P42 となります。
また、歪みの特性として覚えていて欲しいのが、高調波、つまり倍音が生成されるということです。
特に気をつけてほしいのが、きれいな旋律を持つトラック間での利用です。
歪みは倍音を発生させるため、ハーモニーを崩壊させる場合もあるため、自分で歪みの特性を取るのか、元々の旋律のバランスを取るのかを考えて使うことを頭の片隅に置いておくことをオススメします。
また、基本的には入力レベルによって歪み率というものは変化するため、元々の楽曲のダイナミクスを考慮して利用する必要があります。歪みは、コンプレッサーほどではないにしろ、ダイナミクスの変化を与えるものであるため、トラック間の関係性が崩壊しないように音を調整してください。
アナログの魔法
魔法というものは殆どがアナログ機材固有の高調波特性だと思っていいと思います。
EQ の場合はそこに Q 特性や独特の設計があり、コンプレッサーに置いては Knee 特性や独特の Release 挙動であったりもありますが、機材を通すだけでも高調波が足されるものがほとんどです。
このプラグインはトランス固有の高調波特性に自由度を与えているものと考えて下さい。
デジタル製作ではなかなか付加されづらい高調波を任意に調整し付加していき、自身が考える最良の結果を目指してください。