世界で最も有名なロックンロールスタジオであるSound City Studiosの空間を再現する、Sound City Studios Plug-in がUADからリリースされました。
Sound City Studiosは、Bob Dylan, Guns N’ Roses, Nirvana, Red Hot Chili Peppers, Metallicaなど名だたるアーティストが使用したスタジオで、このスタジオで作られたレコードの100枚以上がゴールド/プラチナムレコードに輝いています。
そんな歴史的なスタジオの音を再現した本製品は、ドラム、ギター、ボーカル、シンセなどの素材のサウンドクオリティを引き上げれる製品に感じました。
筆者が使ってみて感じた、空間再現に留まらない Sound City Studios の実力をポイントを押さえてレビューしていきたいと思います。
Sound City Studios Plugin
特徴
UAD Sound City Studios の特徴として、
- Sound City Studios の有名な Studio A に素材を配置したような「Re-Mic」
- ヒットメーカーのヴィンテージマイクコレクションからエミュレート
- 巧みに配置されたキャビネットとマイクのセットアップ
- 伝説的な 3バンドEQ、インラインコンプレッションを含む70年代英国コンソールのトーン
- 秘密兵器 ドルビー A スタイル エフェクト、1176リミッティングなどを含むアウトギア
- 豊かな響きのチャンバーリバーブ
などがあります。
ざっくり捉えるとIRリバーブ系の空間再現プラグインですが、「Re-Mic」をはじめ、これまでのIR系プラグインにはなかった『スタジオの空間や機材をそっくりそのまま持ってきた』感が本製品の最大の特徴といえます。
Re-Micモード
Re-Micモードは、オリジナルのドライ信号を “置き換える “モードで、まるでSound City Studiosで録音された音のようにリアルにマイクの特性と空間を再現します。
Re-Micできるマイクは選択するサウンドソースによって変わります。
録音の距離毎にCLOSE A、CLOSE B、ROOM の3つに分けられ、C12、U67といったクラシックマイクで収録された音を選択でき、各マイクの配分、距離、ローパスハイパスなどがコンソール画面から調整できます。
全体的なサウンド傾向としては、マイク毎に結構キャラが違うので素材との相性が把握しやすく、なによりもルームアンビエンスが非常に高品質で、90年代ロックで聴いた”あの音”をそのまま素材に適用できる感覚になります。
ただ、どのマイクを選択してもルームアンビエンスが強く入っていることと、Re-Micモードは音を置き換えるという特性上、MIXレベルの調整ができないことから、普通のマイクエミュレーションと思って使うと混乱するかもしれません。
本製品はプリセットが強力で上手く調整されているものが多いので、操作に慣れないうちは素材に合ったカテゴリのプリセットを順番に試していくがおすすめです。
特にドラムやピアノ、ストリングスなどでVST音源のアンビエンスがあまり良くない場合でも、パワフルで立体感のあるサウンドが簡単に作れるので重宝すると思います。
注意する点として、位相問題があります。
複数の距離感でセッティングされたマイクの音を混ぜるので、設定によっては位相のレイテンシーが発生します。
ダブリングしたような違和感を感じたら、コンソール画面内のAlign button(時計アイコン)をクリックすると位相が揃うので対処しましょう。
Reverbモード
もう一つのモードであるReverbモードでは、そのままリバーブとして扱えるので、高品質なルーム/チェンバープラグインとしても十分活躍できます。
Re-Micモードではアンビエンスが残りすぎてイメージと合わない場合は、Reverbモードを選択し調整すると良いと思います。
個人的にボーカル素材にはReverbモードの方が扱いやすいように感じました。
洋楽ロックなどで聴ける、ドライ気味で厚みのあるサウンドが簡単に作れます。
EFFECTS
コンソール内には3バンドEQ、コンプ等のDynamics、Chemberの3つのエフェクトがあり、全て高品質なので、マイクエミュは全てバイパスして使つという方法も可能です。
Dynamicsセクションでは、1176の20:1動作や、初めてエミュレーションされたというDolby A301 など6タイプから選択できます。
Dolby A301 は本来ノイズリダクション用途の製品とのことですが、改造されてマルチバンドEQやリミッターとして利用されることがあり、その効果をエミュレーションしています。
独特なエンハンスが掛かってサウンドの質感が大きく変わり、その品質も高クオリティなのでこのセクションだけ使っても良いぐらいでした。
CPU負荷
IR系かつ、複数のエフェクトが搭載されているのでそれなりの負荷があります。筆者環境では一つ起動でCPU15%、4つ起動でCPU20%程度の負荷になっていました。レイテンシーは287sampleでした。
まとめ
全体的に感じる音質の良さ、操作性の良さはさすがUADといった感じで、一流スタジオの空間を手軽に再現できるのは大きな魅力です。
特にドラムやストリングスなどアンビエンスが音色に大きな影響を与える楽器に使用するとサウンドクオリティが数段アップしたような感覚にもなりますし、ジャンル問わず活躍できる製品だと感じました。