自由自在に目的の質感にたどりつけるマルチバンド・サチュレーター、Soundtheory Krafturレビュー

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SoundtheoryのデビュープラグインとしてインテリジェントEQ「Gullfoss」が2020年にリリースされて以降、自動処理系プラグインは次々と登場していますが、先駆けともいえるGullfossは未だ人気は衰えていません。

そんな中、4年ぶりとなる待望の新作プラグイン「KRAFTUR」は、一言で表現するとマルチバンド・サチュレーターになるのですが、見慣れない独特なUIやコントロール類も相まって、正直とっつきにくい印象さえあります。

ただこれが使ってみると『なるほどそういうことね』となりますし、操作に慣れてくるとかなり自由自在に目的の質感を作れます。

では次世代サチュレーターと評されるその実力についてレビューしていきたいと思います。

Kraftur

◆主な機能

主な特徴は以下の通り。

  • 独自のオーバーサンプリングとDSPアルゴリズムによる、最小限のエイリアシングと相互変調歪み
  • シングルおよびマルチバンド処理の間をシームレスに切り替える、三角形のブレンドコントロール
  • 歪みカーブの微調整により、「パンチの効いたサウンド」や「密度のあるサウンド」の間を自由に調整
  • ミックスの比較に役立つMATCH(ゲインマッチ)機能
  • 各周波数帯の歪みカーブとクロスオーバー周波数が制御可能な、3つの周波数バンド

ざっくり言ってしまうと高性能なサチュレーションによって綺麗に音圧上げたり、ダイナミクスを崩さずに飽和感を作れる、といったものです。

ただ、アナログ系プラグインによくある「とりあえず挿せば良い音になる」系ではないのが、この「KRAFTUR」の難しさでもあり、奥深さでもあり、楽しさでもあります。

公式のチュートリアル動画で丁寧に解説されていますが、本レビューでもその流れに沿って使い方を解説してみます。

ミックスコントロールとゲインマッチ

左側にある三角形のミックスコントロールが特徴的ですが、本製品はドライ信号(正確にはエンジン部を通過したもの)と、シングルバンドでサチュレーション処理された信号、マルチバンドでサチュレーション処理された信号の3つのバランスを変更できます。

最初から信号が混ざった状態だと設定の変化を感じにくいので、操作に慣れないうちはマルチバンドに100%振った状態で進めて、適宜シングルバンドとドライを混ぜて調整することをおすすめします。

ミックスコントロールのすぐ下にあるDriveをプラス方向にスライドすれば、サチュレーションが掛かっていきます。

画面右上部分に”Match”と”Bypass”があるのですが、”Match”をONにするとDriveを上げても音量が変わらないので、純粋にサチュレーションの差分をチェックできます。

音量が大きく変化する本製品には欠かせないコントロールです。

ピーク・ヒストグラムの重要性

画面中央にはシングルバンドと、スプリットされた各バンドとの計4つのカーブが表示されます。

デフォルトでは1本のように見えますが、後述する各バンドの”Shift”を動かせばそれぞれのカーブが表示されます。

また、同じく中央にピーク・ヒストグラムがあり、こちらもシングルとマルチの4つが表示されています。

デフォルト状態ではLowとMidのクロスオーバーが350Hz、MidとHighは3500Hzで設定されているので、Lowのヒストグラムは350Hz以下のピークレベル状況を示しています。

各バンドの音は画面上部のそれぞれの名称(Low / Mid / High)をクリックするとソロモードでチェックできます。

本製品の使い方としては、ヒストグラムやメーターを監視しながらOffset、Knee、各バンドのShiftを調整していくことになります。

Shiftで各バンドの天井を決める

マルチバンドで処理する場合、各バンドのトランスファーカーブの位置は、LOW ∕ MID ∕ HIGHの各Shiftで調整します。

この値をプラス方向に変更すると、カーブの閾値が下がっていきます。つまり音量が小さい状態でもサチュレーションが掛かるようになります。

この値をマイナス方向に変更すると、カーブの閾値が上がっていきます。つまり音量が大きくしないとサチュレーションが掛からないようになります。

コンプのスレッショルド動作をイメージすると分かりやすいかと思います。

このShiftの調整およびマルチバンドのクロスオーバー値の調整でサチュレーションの質感が大きく変わります。

例えば2mix音源に本製品を使用する際、低域はあまり歪ませずにクリーンでビッグなサウンドにしたいと考えたとします。

その場合は、Low Shiftをマイナス側に調整しサチュレーションをスルーさせつつ、中域と高域はある程度歪ませることで、低域のパンチ感を濁さずにクリアに迫力を出すことができます。

その他パラメータ

OffsetとKneeはカーブの形状を緩やかにします。

Clipは0dBFSを超えないようにするソフトクリップ、Ceilingではヘッドルームの設定、Gainでアウトプット出力を調整できます。(Clipの前段)

使い勝手について

本製品にはプリセットがついていないので少し上級者向けとの印象も受けますが、GullfossにもついてなかったのでSoundTheory製品の特徴のようです。

実際プリセットの有用性はあまり感じられず、あくまでソースに応じてShiftやクロスオーバーを調整しないと最適な結果を得られないので、都度調整してくださいというメッセージにも感じます。

サチュレーションでどういった結果を得たいのか具体的にイメージできていればいるほど、Krafturは活用しやすいように思いました。

歪みの質感は滑らかでアナログ感がありつつクリア寄りという感じでハイファイな音像を作りたい時には重宝するように思います。

CPU負荷

レイテンシーはゼロになっている代わりにCPU負荷は25%程度とかなり重い部類です。(Pro-L2 の 8x OSと同等)
独自のオーバーサンプリングが適用されていることも大きな要因だと思います。

  • OS : macOS Sonoma 14.1
  • CPU : Mac M2 12コア
  • メモリ : 64GB
  • DAW : Cubase Pro 12
  • バッファサイズ : 2048samples
  • サンプリングレート : 48kHz
  • ビット解像度 : 32bit float
  • オーディオIF : Prism Sound Lyra1

まとめ

「サチュレーション」という単語から想像するサウンド変化より対応できる幅が広がっていて、操作に慣れれば目的の質感を得やすく、サウンド変化の奥深さを感じる製品でした。

基本はミックスバスでの使用を想定されているようですが、明瞭なパンチ感を得れるので、CPU負荷に余裕があれば個別トラックにも使っていきたいと思えました。

Soundtheory Krafturの詳細はこちら

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