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AIによる自動マスタリングツールとして国内でも非常に人気の高い iZotope Ozone が、Ozone10 にバージョンアップしました。
バージョン10ではUI刷新、AIアシスタントの強化、新モジュール追加など大幅なアップデートがなされています。
ここではパワーアップしたAIアシスタントや、新モジュールの使い勝手などを従来バージョンと比較しながらレビューしていきます。
iZotope Ozone 10
Master Assistant
Ozone10で最初に目を引くのは、刷新されたユーザインタフェースです。
AIアシスタント機能のMaster Assistant がAssistant Viewとなり、従来のモジュール画面と切り替え方式になっています。
Assistant ViewではEQやコンプなど各モジュールのAmount(エフェクトの強さ)、バイパスON/OFF、ターゲット設定が操作できます。UIだけでなくAI性能も向上しています。
従来バージョンだとMaster Assistantは比較的シンプルなアプローチしか提示されませんでしたが、Ozone10では新しいモジュールのStabilizerとImpactを含めた複雑なアプローチを提示してくれます。
更にターゲットのジャンルも従来はモダンorヴィンテージだけだったものが、ジャンルが細かく分かれて切り替えて差分を確認できるようになったことで、例えば、「POPSと判断されたけどROCKな感じにしたい」という場合もワンタッチで比較できるようになりました。
従来は別の結果を見たい場合は毎回読み込みが発生していましたが、それがなくなったことで使い勝手はかなり向上していると感じました。
新モジュール
リアルタイムに動く動的なEQ、Stabilizer。ダイナミックにミックスを形作り、より自然でクリアな音に。
Ozone10ではモジュールにStabilizerとImpactとが追加されました。(Advancedのみ)
Stabilizerは自動ダイナミックEQで、問題のある帯域を無段階バンドで調整できます。
自動ダイナミックEQといえばSoundtheoryのGullfossが人気ですが、概要は同じエフェクトといえます。
Stabilizerではターゲットジャンル設定やLow-Mid-HiのAmount設定などGullfossよりも細かい調整が可能です。
Impactは4バンドのトランジェントシェイパーで、コンプを使うよりもよりクリアに、ミックスにパンチを加えたり出過ぎた帯域を馴染ませたりできます。
直感操作が可能な4バンドトランジェントシェイパー。
また、既存モジュールも機能強化されており、MaximizerにSoftClipが追加され、ImagerにはRecover Sidesという機能が追加されました。
SoftClipは3タイプ選べて、従来のOzoneでは難しかったクリアかつパワフルな音像を簡単に作れるようになりました。
個人的にOzone10の一番の推しポイントはこれですね。前バージョンまではクリアすぎる音質故に音を分厚くするのが難しかったですがSoftClipによって一気に解消した感があります。
Recover Sidesは通常ステレオ幅を狭くすると失われるサイド成分を維持するというものです。
広くなりすぎた音場をImagerで狭めるとミックスの奥行きや立体感が薄れたと感じることがありますが、Recover Sidesでサイド成分を持ち上げれば、奥行きを保ちつつステレオを狭くできます。
改善してほしいポイント
これは前バージョンから感じていた部分で、VintageComp、VintageEQなどVintage系のモジュールの影が薄く、アシスタント結果にはほとんど反映されません。
今後のアップデートではもう少しVintage系のサウンド結果も選択肢に入ることを期待したいです。
CPU負荷
CPU負荷は中程度です。統合ツールのためレイテンシーは高めです。(8496sample / 177ms)1つ挿したときにCPU使用率約10%でした。
- OS : macOS Monterey 12.1
- CPU : 3.6 GHz 8コアIntel Core i9
- メモリ : 40 GB 2667 MHz DDR4
- DAW : Cubase Pro 12
- バッファサイズ : 2048samples
- サンプリングレート : 48kHz
- ビット解像度 : 32bit float
- オーディオIF : Prism Sound Lyra1
まとめ
アシスタントの強化によってOzone10はマスタリングツールとしてかなり使いやすくなったと思います。
ただ、アシスタント性能を十分に引き出すにはAdvancedグレードが必須になるのでStandardグレードを検討されている方は物足りなさを感じてしまうかもしれません。
とはいえ、マスタリングの核となるMaximizerにSoftClipが追加され、迫力ある音像を簡単に作れるようになったことは、個人的にかなり便利に感じましたので、Standardグレードでも導入メリットは十分にあると思います。