Ozone、Neutron、RXなど今や全DTMerに馴染みのあるiZotopeから、ディストーションプラグインの「Trash」がリニューアルされました。
名だたるEDMアーティストが愛用していると言われている前モデルTrash2は2022年に販売終了しており、なので今回は実質Trash3というところですが、UIが刷新されて機能や操作性も別モノな感じがあり、ナンバリングがなく改めて「Trash」となっています。
筆者は前モデルを使用したことがなかったので今回初めてTrashに触れましたが、ディストーションだけに留まらない自由度のある製品と感じましたので、基本的な機能からクリエイティブな使い方など紹介したいと思います。
Trash
4つの歪みと4つの空間をブレンド
Trashには大きく「TRASH」「CONVOLVE」の二つのモジュールがあり、「TRASH」では軽い歪みのサチュレーションから過激なディストーションやファズまで60種類以上の歪みが搭載されています。
「CONVOLVE」はIR(インパルス・レスポンス)を適用するモジュールで、リバーブを追加したりサウンドシェイプを変化させることができ、300種類以上のIRが搭載されています。
そしてTrashの大きな特徴として、「TRASH」と「CONVOLVE」のどちらも最大4つの歪み/IRを割り当てて、自由にブレンドすることができます。
ブレンドはXYパッドで行うので直感的かつ簡単に操作でき、ランダマイズができるのでこれだけでも様々な音色変化が楽しめます。
それぞれ細かいパラメータも用意されており、「TRASH」のTiltEQではサウンドの明暗調整ができ、「CONVOLVE」のWidthやStereoizeで空間の広がりを調整できます。
強力なFILTERとENVEROPE
「FILTER」はローパスフィルターですがフィルター自体に歪みを足せる”Heat”、レゾナンス調整の”Scream”が備わっていて、このセクションだけでも過激な音質変化が可能になっています。
また、「ENVEROPE」では動的なモジュレーションを加えることができ、「TRASH」の歪み量、ブレンドコントロール、そして「FILTER」のカットオフ周波数を音が鳴るタイミングで動かすことができます。
これにより、例えば音のアタック部分では丸みを出しつつサスティン部分でざらつかせる、みたいな奥行きあるサウンドメイクが可能となっています。
歪みだけに留まらない自由度
過激なディストーションが作れる本製品ですが、個人的には「CONVOLVE」の空間演出が非常に魅力的に感じました。
前述のブレンドにより他のリバーブプラグインでは中々作れない空間もさくっと作れますので、印象的な空間がほしいときの選択肢として有効だと思います。
解説動画ではボーカルリバーブとしての使い方も紹介しているのでそちらも参考にしてみてください。
気になるところ
オートゲインがついているのですがデフォルトではOFFになっていて、ONに変更した後でプリセットを切り替えるとOFFに戻ってしまうため、音量感を変えずにプリセットを比べたいときに不便を感じました。
過激に歪むプリセットが多いので音量感がプリセットによってバラバラなので、オートゲインのホールド機能は今後のアップデートで期待したいところです。
Outputのパラメータはプリセットを切り替えてもそのままの値だったので、突然の大音量でびっくりしないためにも、最初にOutputを絞っておく方が良いかと思います。
CPU負荷
CPU負荷は軽めです。1つインサートした時のCPU使用率は約5〜8%でした。PluginDoctorで検証したところ、レイテンシーは50ms前後になっていました。
- OS : macOS Sonoma 14.1
- CPU : Mac M2 12コア
- メモリ : 64GB
- DAW : Cubase Pro 12
- バッファサイズ : 2048samples
- サンプリングレート : 48kHz
- ビット解像度 : 32bit float
- オーディオIF : Prism Sound Lyra1
まとめ
細かいパラメータは色々ありますが、基本的にはTRASHとCONVOLVEのブレンド具合で音色が決まっていくので見た目より操作はシンプルで、それでいて音色の自由度も高いので扱いやすいです。
こういった音がほしいと決め打ちで作っていくよりも、ランダマイズで思わぬ結果になってそれがオリジナリティになっていく、みたいな偶然の産物が楽しめますし、クリエイティブを刺激してくれる製品です。