MOTUオーディオインターフェイスのフラッグシップモデル、16A(第二世代)レビュー

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初代MOTU 16Aは2014年にリリースされて以降、世界中のプロスタジオの定番機として長年愛されてきました。

そんな同社のフラッグシップモデルが今回11年振りにフルモデルチェンジとなりました。

本モデルは業界初のThunderbolt4 / USB4 接続、2系統のAVB接続はMilan対応、専用アプリ「CueMix Pro」のパッチベイ機能など最新技術が惜しみなく搭載されています。

M2の大ヒットに始まってUltraLite mk5、828(第5世代)など近年リリースしたハイエンドモデルでも好評を得ているMOTU社なので、この16Aにも期待している方は多いかと思います。

今回16Aをお借りして、筆者自宅の使用感でレビューさせていただくのですが、16Aのメインユースである中〜大規模スタジオやライブ録音での使用はできておりません。

あくまで自宅で使用した感覚、小規模スタジオ目線でのレビューとなりますが、結果的にはホームユースでも十分検討できる製品と感じたので、その辺りを詳しく触れていきたいと思います。

MOTU 16A

主な特徴

MOTU 16Aの主な特徴は以下の通り。

  • アナログ16 x 18 I/O、Optical x 2 I/O、Thunderbolt 4 / USB 4 / AVB接続 オーディオインターフェース 兼デジタルミキサー&パッチベイ
  • ESS SABRE 32DAC搭載で125dBのダイナミックレンジを実現。192 kHzまでのすべての標準サンプルレートをサポート。
  • 96kHzで1.8msという低いラウンドトリップレイテンシー(RTL)を実現。
  • ホストコンピューターの接続に応じて最大256のオーディオチャンネル(128イン、128アウト)を使用可能。
  • 32bit floatのDSPで64チャンネル・ミキシングと、リバーブ、4バンドEQ、コンプレッションを含むエフェクト処理を、最大96kHzまでのすべてのサンプル・レート環境で実現
  • 直感的なバーチャルパッチコードであらゆるソース信号をあらゆるデスティネーションに簡単にルーティング
  • 2つのギガビット・ネットワークポートを使用し、標準的なネットワークケーブルを用いた複数ユニットのデイジーチェーンや、AVBスイッチを追加し、数百メートルの配線でも超低ネットワークレイテンシーで複数のインターフェースやコンピューターとネットワークを構築可能

上記の他にもハイライトとなる機能を多く搭載しており、できないことを探す方が難しいぐらいの多機能ぶりとなっています。

筐体はフルメタル構造が採用され、旧モデルの樹脂系パネルより剛性と放熱性が改善されています。

音質、スペックについて

16Aを繋いで音を出した瞬間、その音質の良さと解像度の高さに驚きました。

筆者は現在PrismSound Lyra1を使用していて、これまでもRME、Antelopeなど人気機種やメーカーを使用してきましたが、その中でも16Aの解像度の高さは頭ひとつ抜けていると感じました。

16Aのラインアウトプットのカタログスペック値はダイナミックレンジ 125dB、THD+N -114dBとなっています。

この数値は人気の他社ハイエンドモデルと遜色ない値になってますし、数値から音質の良さを推し測ることができますが、実際に体感する音質としては、スペック以上の解像度の高さとレンジの広さを感じます。

全体的な傾向としてはアタックと高域がくっきり出ていて、空間の広さと細やかさの再現に優れていると感じました。

帯域バランスとしては、中域と低域がやや落ち着いてるように感じ、相対的に少し高域寄りのバランスになっている印象があります。とはいえ中域以下に物足りなさを感じることはなく、制御されて鳴っている印象です。

どちらかというとモニターライクなサウンドになっていますが、全体的な質感に太さを感じるので、地味な印象も受けずリスニング的な心地よさも感じます。

同社の828もラインアウトのスペックは全く同じなのでサウンドもほとんど同じかと思いますが、16AはThunderbolt4 / USB4 接続、828はUSB3接続の違いがあります。

USB4規格はUSB3の約8倍の転送速度があるので、もしかすると微妙にサウンドにも影響があるかもしれません。

旧モデルには無く本モデルで新たに追加されたヘッドホンアウトについても、解像度の高さと帯域バランスのスムーズさは同じ印象で、より耳に近い分、アタックの鋭さはモニターよりも細かく感じます。

このアタックの明瞭さや分離感、高域の煌びやかさは他にない特徴だと思いますが、ライン出力に比べるとやや硬めの印象で、長時間のリスニングは疲れてくるかもしれません。

とはいえ、この解像度の高さはミックス/マスタリングなどのモニタリングでは、強力なサポートになることは間違いありません。

インプットの音質検証でも手持ちのLyra1と比較してみましたが、16Aの方がよりクリアに録れていて、高域に艶やかさや丸みを感じました。

これがTHD+N -114dBという超低歪みからくるものなのか、MOTUサウンドの特徴かは分かりませんが、その艶やかさが音を綺麗にまとめてくれるので安心して録音できます。

Lyra1が2013年リリースで10年以上の技術差があるとはいえ、ここまで差が出てしまうとは正直予想していませんでした。

なお、検証はマイク録音で行いましたが、16Aはプリアンプを搭載していないので外部プリアンプを使用しての検証となりました。

この点、同社828はマイクプリを搭載しているので、構成をシンプルにしたい場合は、828の方が適しているということになりますが、16Aのメインユースは多入出力が必要な環境であり、マイクプリを別途用意することはある意味普通の話なので、特にデメリットにはならないと思います。

もうひとつ録音時に驚いたことはレイテンシーの低さで、16Aのバッファサイズを最小の32sampleに設定した時の入力レイテンシーは1.042msでした。

対してLyra1は同条件で入力レイテンシーが3.917msだったので、16Aの方が違和感なく録音できますしIFとしての性能が高いといえます。

レイテンシーの低さはライブ録音や配信でのパフォーマンスに直結するので、やはり16Aの本領発揮できる場面はライブ録音や配信になってくると思います。

物理の入出力が多いことも16Aの大きなメリットのひとつであり、モニターの切り替えはもちろん、様々なアウトボードとの接続に対応しています。

AVB接続、Milan対応について

旧モデルから16Aの大きな特徴だったAVB接続は、ギガビットネットワークポートを用いた接続方式です。

LANケーブルで機器を接続することでこれまでの接続方式より低レイテンシーを実現しているというもので、旧モデルでは1つだったポートが本モデルでは2つに拡張、さらにMilan(Media Integrated Local Area Network)というネットワークプロトコルに対応したとのことです。

これにより同じくMilanに対応している他社メーカー機器との接続が可能、複数のメーカーの機器を組み合わせたシステム構築が容易になっています。

ルーティング、内部ミキサーについて

専用アプリのCueMix Proでは入出力管理やエフェクト設定などが行えます。

多入出力を管理するにはこういったアプリの操作方法をマスターする必要がありますが、CueMixProは他社管理ツールと比較してもかなり直感的な操作がしやすくユーザフレンドリーな構成になっています。

ルーティング画面は仮想パッチベイ形式を採用していて画面上でケーブルを繋ぐという動作を行って構築していくので、ルーティングがどうなっているかをイメージしやすくなっています。

とはいえ、ルーティング操作に馴染みがないと戸惑うこともあると思います。

そんなときは代理店ハイ・リゾリューションからパッチベイ機能解説動画が公開されているので、参考にしていただくと基本的な操作は問題なくできると思います。

使用例としては、DAW内で処理した2mixをCueMixPro経由で外部アウトボードコンプに送り、コンプが掛かった音をCueMixProに戻してDAWのインプットに送り録音する、というルーティングがシンプルな操作で可能です。

他には配信用途だと、OBSに流す音と自分がモニタリングする音のバランスを変更しつつ、別系統で作ったサブミックスをDAWに録音、なども簡単にルーティングできます。

内部ミキサーも優秀で、4バンドEQ、コンプ、ゲート、リバーブがついているためライブ録音や配信時の調整も全く問題なく可能。

もちろんモニター用とメイン出力でバランスを変えて別系統で送ることができます。

オーディオIFのルーティングツールは総じて操作性が独特な印象があったのですが、CueMixProは初心者の方でも安心できるぐらい直感的です。

入出力が膨大なので初めは戸惑うかもしれませんが、操作してみるとシンプルなので慣れるまで時間は掛からないと思います。

まとめ

冒頭述べたように16Aの本領ともいえるAVB接続や多入出力、複雑なルーティングなどを試すことはできませんでしたが、それでも本モデルのパフォーマンスとポテンシャルの高さを感じることはできました。

入出力の音質の良さ、解像度の高さ、帯域バランスはどれも一級品で、このクオリティで16In / 16 Out、内部64ch(32Bus)使えるのは驚異的ですし、内部ミキサーの使い勝手、拡張性など総合的に考えると、圧倒的なポテンシャルを感じます。

ホームユースには同社828も十分なスペックを有してはいますが、パッチベイ機能は16Aだけの機能であり、この直感的な操作性も唯一といえるので、自宅使用や小規模スタジオのみの利用でも16Aは十分活躍できると思います。

MOTU 16Aの製品ページはこちら

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