クリッパーの使い方と重要性解説!Signum Audio SKYE Clipper 徹底レビュー

SKYE Clipperは、ダイナミクス処理技術に定評のあるSignum Audioのクリッパーです。

洗練された7種類のクリッピングアルゴリズムをシンプルな操作性で扱えるので、クリッパーに慣れてなくても簡単に扱うことができます。

今回のレビューでは、そもそもクリッパーとは何ぞや?という部分や、ミキシング/マスタリングにおけるクリッパーの重要性と併せて、その中でSKYE Clipperが役立つ部分をご紹介させていただきます。

なお、動画解説では手持ちのクリッパー(Kazrog KClip3、Newfangled Saturate)と音圧上げ比較も行っているので是非そちらもご覧ください。

SKYE Clipper

クリッパーとは

クリッパーの基本動作は、『スレッショルドを超えた音量をレシオ無限大で圧縮させつつ歪みを加える』です。

レシオ無限大で圧縮というと、リミッターやマキシマイザーと同じ動作になりますが、クリッパーとの大きな違いとして、『ダイナミクス制御』があります。

アタック/リリースタイムでトランジェント(音の輪郭)を変えるのがリミッターやマキシマイザーで、歪みを加えることでトランジェントの形を変えるのがクリッパー、となります。

ざっくりですが、クリーンにピークを抑えてリミッティングするにはリミッター、音を歪ませて質感変化させつつリミッティングしたい場合はクリッパー、が適してます。

このように、リミッティングする際の方向性が異なるリミッターとクリッパーですが、リミッタープラグインによっては、クリッパーセクションが搭載されているものも多くあります。

例えば大人気の iZotope Ozone Maximizer ではバージョン10からSoft Clipが追加されたりと、クリッパーの需要は高まっているといえます。

クリッパーの重要性について

クリッパーが搭載されているリミッター製品が多いのであれば、わざわざクリッパー単体を使う必要性はないのでは?と思うかもしれませんが、”どのように歪ませるか”は、サウンドの質感を決める上ですごく重要な要素になります。

リミッター付属のクリッパーだとどうもほしい音にならない、という場面はあるので、最終調整したい時の選択肢としてクリッパーが便利だったりします。

また、現代的な音の厚みや音圧感を作る上ではクリーンな歪みが欠かせないので、音圧を上げきれない場面では、ノイズレスに歪ませれるクリッパーの需要が高くなります。

SKYE Clipper の特徴

SKYE Clipper の大きな特徴として

  • 7つのクリッパーアルゴリズム
  • リアルタイム アンチエイリアシング

があります。

リアルタイム アンチエイリアシングは、クリッピングによって発生するエイリアシングノイズを大幅に削減できるという独自の技術です。

エイリアシングノイズとは、例えば48kHzのプロジェクトにおいて24kHz以上の倍音が生成された場合に、3kHzや5kHzといった可聴域にノイズとなって出てくる現象です。

従来の回避策として、プラグインにオーバーサンプリングを搭載し、内部的に48kHz以上の処理をすることでノイズを生成させない対処がありましたが、CPU負荷も増えるデメリットもありました。

ところがSKYE Clipper ではオーバーサンプリングを使わずにエイリアシングノイズの削減できるため、CPU負荷を軽減できます。

また、7つあるクリッパーアルゴリズムもテープスタイルのWarm、微調整用のSmooth、激しい歪みのAggressiveなど、幅広い用途に対応しているので柔軟性も高いところも魅力です。

そして、クリッパープラグインには珍しくMIXノブが付いているので、パラレル処理も可能です。

パラレル処理をすると実質リミッターとしては使えませんが、サチュレーターとしての用途もこの製品のコンセプトのひとつになっていると思います。

なお、本製品はStereo版とSurround版があり、Surround版はDolby Atmosにも対応しているとのことです。

SKYE Clipper の使い方

肝心の音質についてですが、SKYE Clipper はこれまでのSignum Audio製品よりもアグレッシブな音作りができるなと感じました。

Signum Audioといえば正確な動作でクリーンな音質というイメージがありましたが、SKYE Clipperもそういった特徴は引き継ぎつつも、AggressiveやBiteモードで攻撃的なサウンドも作れるようになっています。

例えばボーカル素材にこれらのモードで強くリダクションさせると拡声器サウンドを簡単に作れますし、クリーンに使う場合はSmoothやWarmモードといった具合です。

もちろん、マスタリング最終段でリミッター/マキシマイザーと併用することで質感調整を追い込めますし、SKYE Clipper単体でも十分なリミッター性能があるので、CPU負荷が気になる環境下で高性能リミッターが使えない場面でも活躍します。

一方で、どのモードも透明性の高いデジタルな質感なので、同じ歪みでも真空管のような太い音を作りたい場合には相性が良くありません。

あくまでクリーンでノイズレスな質感がほしいときのチョイスになると思います。

改善してほしいポイント

MIXセクションがPRE GAINとPOST GAINセクションより前段にあるために、例えばPOST GAINを上げた状態でMIXを絞ると音量が大きくなってしまいます。

PRE GAINは隣にあるDRY GAINスイッチをOFFにすることでMIXの影響を受けなくすることはできますが、レベル管理したい場合はこの辺りの操作を覚えておく必要があります。

CPU負荷

当環境で1個挿した際のCPU負荷は2〜3%で、Ozone 9 のMaximizer単体よりも少し軽いぐらいでした。レイテンシーは33msと、リミッター系では少ない部類です。

  • OS : macOS Sonoma 14.1
  • CPU : Mac M2 12コア
  • メモリ : 64GB
  • DAW : Cubase Pro 12
  • バッファサイズ : 2048samples
  • サンプリングレート : 48kHz
  • ビット解像度 : 32bit float
  • オーディオIF : Prism Sound Lyra1

まとめ

クリッパーやサチュレータープラグインには扱いが難しいものもある中、SKYE Clipper はどんな素材でもクリーンに歪んでくれるので余計なノイズ成分を気にすることなく質感調整できる製品です。

エイリアシングノイズが発生しにくいことで音圧も上げやすくなっているので、マスタリングで音圧を上げたい場面でも活躍できると思います。

SKYE Clipper(Stereo)の詳細はこちら

SKYE Clipper(Surrond)の詳細はこちら

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