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AIによる高精度な分析が人気のSonible smart:comp の最新バージョン、smart:comp 2 がリリースされました。
smart:comp 2 になって多数の機能が追加され、大幅に進化しています。
前バージョンからAI分析の精度には定評がありましたが、進化したSpectral Compression機能や、ダイナミクスシェイピングが追加されたことで、かなり積極的な音作りも可能となっています。
今回はAIアシストとクリエイティブが高次元に融合した本製品の特徴と魅力についてレビューさせていただきます。
smart:comp 2
音・性能・特徴・使い方
AIアシスト
smart:comp 2 の大きな特徴であるAIアシストは前バージョンから正統進化しており、入力ソースを選択する際のプロファイルが10→31と大幅に増えています。
楽器のエレキorアコースティック、2mixのジャンル、スピーチ素材向けなど、細かく分かれていて、どれを選れば良いか迷うことも少なくなると思います。
AI分析による結果はレシオ2:1前後、アタック遅めリリース長めの軽い処理になることがほとんどですが、ワンタッチである程度ダイナミクスが整うので、時短ツールとして活躍できます。
Spectral Compression
本製品のキモとも言える「Spectral Compression」機能は大幅に進化しました。
初見だと何が起こっているか分かりにくいのですが、2000バンド以上の高解像度マルチバンドコンプが通常のコンプにレイヤーされて動作しているとイメージすると分かりやすいと思います。
プラグイン起動時は使用できませんが、Learnボタンでソースを読み込ませるとアンロックされます。
アップデートポイントとして、調整パラメータが掛かりの強弱(Sensitivity)のみだったところが、Style、Colar、Spectral Comp(前Sensitivity)の3つに増えています。
Styleはサチュレーションで、Colarはサウンドの明暗を調整できます。
Spectral Compの動作周波数範囲をFrequency rangeで設定できるのは前バージョンと同じですが、Spectral Linkが追加されたことで、動作周波数範囲外の通常のコンプ動作の強弱も可能になっています。
これにより、範囲外は全くコンプを動作させないというサイドチェインEQ的な使い方も可能です。
これとは別に一般的なサイドチェインEQも追加されたので非常に多彩な音作りが可能になっています。
Free-form Transfer
新機能の一つである「Free-form Transfer」は、自由にダイナミクスシェイピングを設定でき、アタックとリリースの挙動を細かく調整可能です。
ダウンワード/アップワード処理も自由自在なので、特にドラムトラックとの相性はかなり良くなっていると思います。
レベルヒストグラムが表示されるようになったことでダイナミクスがどのように変化しているか視覚的に判断できるのでトランジェントシェイパーとしても高性能です。
Spectral Ducking
前バージョンから引き続きダッキング用途の外部サイドチェインも搭載。
干渉している帯域範囲だけをダッキングさせることができます。
主な特徴
- ワンクリックでコンプレッション・パラメータを自動設定
- 音色とダイナミック・バランスを維持可能な、2,000バンドにも亘るスペクトル処理
- サイドチェイン信号のためのスペースを作る、周波数依存のダッキング機能
- 複雑なコンプレッションにも対応する、自由形式の伝達関数とテンプレート
- コンプレッション結果の質感を変更する「Color」と「Style」ダイヤル
- 自動出力ゲイン調整、Mid/Side処理、入力レベルのライディング、サラウンドサウンド対応
気になる音質については、一言で表すと『どこまでも原音に忠実』だと思いました。
この『どこまでも』がポイントで、極端なセッティングにしても原音の質感を保ったままダイナミクスと帯域バランスが変化していくように感じます。
これまでもクリーンな処理がウリのコンプは多数リリースされましたが、極端なセッティングではサウンドバランスが崩れるので、結果的に軽めのセッティングでしか使えないことが多くありました。
それに対しsmart:comp 2は、極端なセッティングでも原音の質感を保ってくれるので、状況を選ばずチョイスできる万能さがあります。
例えば、近年のソフトウェア音源はプリセット時点で完成された状態のものも多く、その音像や質感をできるだけ変えたくないという状況が少なくありません。
とはいえ、ミキシングではダイナミクスを調整しないと他のトラックと上手く混ざらないので、如何に原音の印象を保ちつつ最適なダイナミクスを作るか、は重要なポイントとなります。
その部分でsmart:comp 2の『どこまでも原音に忠実』な音質は、ユーザーのクリエイティブを強力にサポートできるんじゃないかと思います。
改善してほしいポイント
LearnさせるとデフォルトでオートゲインがONになるんですが、通常のコンプ動作によるリダクション量を基準にゲインアップしている様子。
このため、Styleで歪みを足したりSpectral Link で低域をスルーさせた時など、設定次第ではかなりゲインアップされてしまいます。
※Settingでオートゲインの自動ONをさせなくすることは可能
また、レイテンシーの影響なのかDAWの再生や停止の瞬間は上手く動作せずにプツッ音が発生します。
CPU負荷
CPU負荷は非常に軽いですが、レイテンシーはあります。(2108sample / 43.9ms)
1つ挿したときにCPU使用率1%未満、10個挿して7〜8%ほどでした。
- OS : macOS Monterey 12.1
- CPU : 3.6 GHz 8コアIntel Core i9
- メモリ : 40 GB 2667 MHz DDR4
- DAW : Cubase Pro 12
- バッファサイズ : 1024samples
- サンプリングレート : 48kHz
- ビット解像度 : 32bit float
- オーディオIF : Antelope Discrete 8 SC
まとめ
初心者の方にはAIアシストをフル活用した時短ツールとして、中級者以上の方にはSpectral Compやシェイピングを駆使したダイナミクス統合ツールとして活躍できる製品だと思います。
改善希望ポイントで挙げたように気になるところはあるものの、AIアシスト系製品は細かい音作りが難しいという従来製品の欠点をかなり解消しており、次世代コンプの筆頭となりえる製品になっています。