AI搭載デベロッパーの筆頭格であるSonibleは、2013年の設立から数々の有力プラグインをリリースしてきました。
smart:EQシリーズは2017年の初代smart:EQ+に始まり、着実に世代を重ね、2023年12月に今回紹介するsmart:EQ 4をリリースしています。
アンマスキングやダイナミックEQなど、ここ数年のデジタルEQのトレンドを踏襲しながらもオリジナリティの高いsmart:EQ4について、使用感などレビューいたします。
smart:EQ 4
smart:EQ 4の主な特徴は以下になります。
- smart:filter:AI解析でトーナルバランスを自動補正。楽器別21種・ジャンル別22種のプロファイルを搭載
- クロスチャンネルアンマスキング:最大10トラックをグループ化し、帯域の被りを自動解消
- リモートコントロール:グループ内の全インスタンスを1画面から操作
- ダイナミックEQ:各バンドにスレッショルド/レシオ/アタック/リリース/レンジを搭載
- リファレンストラック:任意の音源の音響特性をEQの目標値に設定
- オートゲイン:EQ処理によるレベル変化を自動補正
smart:EQ 4の大きな設計思想として、「個々のトラックではなくミックス全体の文脈でEQを扱う」とSonibleは提唱しています。
これまでのAI搭載および自動処理系EQは、インサートしたトラックのみの周波数で判断しますが、smart:EQ4は、グループ化した複数トラックの帯域関係を把握した上で、『どこを削りどこを主張させるか』を全体的なバランスから判断するとのこと。
さらに、プロエンジニアとの協業開発しているとのことで、単に数値的なマスキングだけではなく音楽的なアプローチが可能となっています。
クロスチャンネルアンマスキング
レコーディングからミックス/マスタリングまで、EQを使用するタイミングは無数にありますが、その中でも特に難易度が高い処理は、マスキング解消だと思います。
ミックスの全体感をチェックしながら、同じ帯域でぶつかってる複数トラックのEQを行き来しながら補完的なカットを繰り返す、という作業に時間を取られた経験のある方は多いと思います。
smart:EQ4 のグループモードはこの問題に対して、対象トラックを一箇所で管理して帯域の配分を決める、というアプローチが可能です。
グループ化したトラックにはFront / Middle / Back の3段階で優先順位を設定でき、距離感の調整もできるのが画期的です。
グループ内のトラックは1つの画面で一元管理できるので、EQのウィンドウを並べる必要もありません。
前バージョンのsmart:EQ3でもクロスチャンネル処理は可能でしたが、優先順位設定と一元管理が加わったことで、実用性はかなり上がっている印象です。
単体EQとしての実力
アンマスキング機能がかなり強力ですが、smart:EQ4 は単体のEQとしても高性能です。
例えばダイナミックEQモードでは、今バージョンからスレッショルド、レシオ、アタック、リリース、レンジとコンプレッサー的なパラメータが各バンドに搭載されました。
今や高性能EQにはダイナミックモードは必須級で、その機能性や使い勝手を問われることが多いですが、そういった要求に対してもsmart:EQ4 は十分に応えてくれます。
リファレンストラック機能も実用的で、リファレンス楽曲を読み込ませてその音響特性をEQの目標に設定すると、「この曲のトーンバランスに近づけたい」という作業が効率的に行えます。
音質もナチュラルで劣化や音痩せはする感覚はありません。
ミニマムフェイズモードではレイテンシーゼロで動作するため、ライブ配信でも気軽に扱えるメリットがあります。
CPU負荷
ミニマムフェイズモードで1〜2%程度と軽量です。
リニアフェイズモードではレイテンシーが約46msになりますが、CPU負荷自体は大きく変わりません。
- OS : macOS Sequoia 15.3
- CPU : Mac M2 12コア
- メモリ : 64GB
- DAW : Cubase Pro 14
- バッファサイズ : 2048samples
- サンプリングレート : 48kHz
- ビット解像度 : 32bit float
- オーディオIF : Prism Sound Lyra1
まとめ
EQプラグインは高機能な製品も多いカテゴリですが、「トラック間の帯域配分を相互解析する」製品はsmart:EQ4 唯一の機能性だと思います。
帯域整理を高精度に行うには膨大な経験値が必要ですが、それをある程度AIに任せて問題ないレベルにまで達している印象で、時短効果はかなり大きいと感じています。
既に複数EQを所持している状況でも活躍できる場面はあると思います。