鍵盤楽器などでおなじみのCASIOが、新規事業としてCASIO CREATOR ECONOMYのサービスをスタートさせています。
近年、スマートフォンの登場に代表されるテクノロジーの進化によって、誰もが気軽に発信し、クリエイターとして活動できる時代が到来しました。
CASIOは、こういった流れの中で巨大なクリエイターコミュニティが形成されつつあることに着目。
その第一歩として、音楽と動画ライブ配信の領域を選択、2つのサービスを立ち上げています。
今回はそのサービスの1つである、効果音生成ツール「Waves Place」を中心に取り上げていきたいと思います。
- 1 CASIO CREATOR ECONOMY
- 2 Waves Placeとは
- 3 Waves Place開発者インタビュー
- 3.1 現時点でWaves Placeはどういった方々に使って欲しいと考えておられますか?
- 3.2 Waves Placeを触ってみた第一印象では、得意な音と、そうでない音とあるように感じました。現状、生成されたサウンドをDAWなどの外部ソフトウェアで加工して使用するのを前提としているのでしょうか?
- 3.3 CASIOさんほどの大企業ともなると、実用最小限でリリースするというのは、かなりご苦労があったのではないでしょうか?
- 3.4 とても意欲的で個人的にはとても良いやり方だなと感じました。
- 3.5 イメージに近い生成結果にするためには、プロンプトが重要だと思いますが、慣れていない方のための補助機能(例:AIがプロンプトのヒントを出してくれる)などの実装予定はありますか?
- 3.6 ユーザーが想像していなかったところに面白さがあるというか、クリエイティブがあるというところですよね。
- 3.7 Waves Placeのユーザーが実際サウンドを生成して「成功」「失敗」のフィードバックはどのように分析して、どのようにサービスに反映されていく予定でしょうか?
- 3.8 現在CASIOさんが気になっているAI関連または効果音のサービスはありますか?
- 3.9 Waves Placeは長期的に育てていく前提のプロジェクトだと思いますが、最終的な製品のビジョンはどのようなものでしょうか?
- 4 Waves Placeの使い方のコツを聞いてみた
- 5 料金体系
- 6 さいごに
CASIO CREATOR ECONOMY
CASIO CREATOR ECONOMYは「ひとりひとりの輝きを、みんなの輝きへ。」をビジョンに掲げ、商品展開が予定されています。
クリエイターとして誰もが輝きを放ち、主役になるチャンスを掴むために。その輝きを、想いをひとつにする多くのファンと共有するために。CASIO CREATOR ECONOMYは、ひとりひとりの創作活動を支え、活躍の場を広げることを目的に、コンテンツ制作やライブ配信、ファンとのコミュニティ運営などをサポートします。自分らしさを表現するすべてのクリエイターと、それを応援するファンが一体となることで、胸に秘めた夢や希望を、世界を照らす輝きに変えていく。情熱をスパークさせる力をもっと。挑戦をドライブさせる力をみんなと。これからのクリエイターにふさわしいステージを、そこに集うファンとともに。驚きと感動を生み出す無限の可能性を、カシオから。
CASIOといえば、DTMerにとってはシンセサイザーや鍵盤楽器、また音楽分野以外でも電卓や時計といったプロダクトを通じて、長年にわたり高い信頼を築いてきた巨大メーカーというイメージを持つ方が多いのではないでしょうか。
そんなCASIOが、新規事業としてクリエイター市場に本格参入するのは、大きな意味を持つのではないかと思います。
Waves Placeとは

Waves Placeは、例えば「木製のドアがゆっくりと開く音」などと、テキストを入力するだけで、AIが効果音を生成してくれるサービスです。
効果音などの音素材を自身の楽曲や映像作品、配信などで使用する際に多くのクリエイターが気になるのが権利関係の不安。
Waves Placeは、権利的に問題のない音のみを生成モデルに学習させているため、
加えて、日本発のサービスなので日本語対応という点も見逃せません。

Waves PlaceのAI技術は、株式会社AldeaLabというAI専門のスタートアップ企業の技術がベースとなっています。

株式会社AldeaLabでは、新しい機能の開発や、生成精度の調整などを定期的に行なっているとのこと。
Waves Place開発者インタビュー
事業開発のリーダーである、CASIOの石崎氏にインタビューすることができましたので、開発の経緯や現在の性能などについておうかがいしました。

現時点でWaves Placeはどういった方々に使って欲しいと考えておられますか?
石崎氏:基本的に効果音を使うクリエイター様全てに使って欲しいと考えておりますが、中でもサウンドクリエイターの方に特に使って欲しいですね。次いで、ゲーム配信者の方々や、動画クリエイターの方々といった感じです。
加えて重要視しているのが、ストリーマーの方々です。配信中に例えば「拍手の音」などの効果音を使う場面が多いので。
ストリーマーとリスナーをつなぐ番組表型スケジューラーサービス「Streamer Times」と、AI効果音生成サービス「Waves Place」で、ユーザー間を行き来させられるようなことも今後やっていきたいと考えています。
Streamer Timesは、ストリーマーとリスナーの想いをつなぐプラットフォーム。配信告知やスケジュール管理など、ストリーマーのセルフプロモーションを支える機能から、リスナーの「推し活」に役立つ、自分専用の番組表やレコメンド機能まで、配信と視聴、それぞれをサポートする機能を搭載。
Waves Placeを触ってみた第一印象では、得意な音と、そうでない音とあるように感じました。現状、生成されたサウンドをDAWなどの外部ソフトウェアで加工して使用するのを前提としているのでしょうか?
石崎氏:現状の生成精度では、そうせざるを得ない完成度だと感じております。現段階では、中上級者向けですね。
というのも、今回、実用最小限及びかなりの短期間でサービスを立ち上げまして、まずはとにかく出す、そして出した後でユーザー様の反応を見て、生成精度も含めサービス全体を改善していく、という方針で進めています。
CASIOさんほどの大企業ともなると、実用最小限でリリースするというのは、かなりご苦労があったのではないでしょうか?
石崎氏:相当な勢いでやりましたね。上層部の説得も含めて、スピード感を持って攻めました(苦笑)
とても意欲的で個人的にはとても良いやり方だなと感じました。
石崎氏:CASIOは今までハードウェアを作ってきた会社で、ソフトウェアサービスをあまりやってこなかったこともあり、会社全体として商品はリリースしたらゴール、という意識があるんです。
Waves Placeをリリースするにあたり、「サービスはリリースしてからがスタート」ということを社内で啓蒙し、実用最小限でリリースするに至ったという経過があります。
イメージに近い生成結果にするためには、プロンプトが重要だと思いますが、慣れていない方のための補助機能(例:AIがプロンプトのヒントを出してくれる)などの実装予定はありますか?
石崎氏:現状の仕様では今のところ特に考えておりませんが、「AIでプロンプトを最適化」という機能を実装していて、入力したプロンプトをより拡張することは可能です。
例えば「雨の音」と入力しただけだと、ただの水の音になりがちですが、プロンプト最適化ボタンを押すことで「山の中の空気感を感じる中で聴こえる雨の音」といった感じに情景を広げてくれます。
さらに「プロンプトの忠実度」の割合(0%〜100%)を調整できますので、生成結果の度合いを変えられます。
しかし、まだ上手く動いているとは言えないので、こちらも今後改善していきたいと考えています。

「雨の音」をAIでプロンプトを最適化し、80%の忠実度にすると次のように英字で変換された。日本語訳は次のとおり。
しとしとと地面に落ちる雨音、時折水たまりに跳ねる水しぶきが、心地よい環境を創り出す。雨音は強まり弱まり、遠くで轟く雷鳴が背景に響き、屋内にいる安らぎの感覚をさらに深める。
イメージ通りのサウンドが生成されるのが理想という話がある一方で、偶発的なサウンドがクリエイティブにつながるということも重要だと考えています。
例えば、動画クリエイターの方が「雨の音」が欲しい場合、一般的に想像する「雨の音」が欲しいと思うんですが、サウンドクリエイターの場合だと少し違って、自分のイメージと違った結果になっても、加工したり、別の曲に使用したり、将来的に使用する為に保存しておくなど、プロンプト通りの結果が出ないことがサウンドクリエイターにとっては価値を感じられる場合もあるのかなと。
サウンドクリエイターは音が”目的”であって、動画クリエイター様は音が”手段”であると考えると、ユーザーによって目的と手段が違うので、同じ結果でもユーザー体験が異なると考えています。

公式があらかじめ用意しているジャンル別のサウンドからイメージする生成結果に近いプロンプトを再利用もできる
ユーザーが想像していなかったところに面白さがあるというか、クリエイティブがあるというところですよね。
石崎氏:より新しいクリエイティビティを誘発させると言いますか、間違った音が出てきたとしても、そこを面白がれると、非常にいい感じがしますね。
Waves Placeのユーザーが実際サウンドを生成して「成功」「失敗」のフィードバックはどのように分析して、どのようにサービスに反映されていく予定でしょうか?
石崎氏:AIの知見が無い中で私たちもかなり手探りな状態だったので、まずは、モデルが完成した後に社内の音楽経験者を集めて、主観的な評価を行いました。
私自身もバンドをやっていた経験があるので、そういうメンバーの音楽の経験などを通じて良い、悪いの判断をしていった感じです。
リリース後は、ユーザーの生成プロンプトの内容と傾向など、随時データ取りを実施して、どのようなクリエイターがどういう効果音を求めているか、というニーズの把握を常に行っております。

他のユーザーが作成したサウンドを検索することが可能でダウンロードはもちろん、プロンプトを再利用することもできる。
現在CASIOさんが気になっているAI関連または効果音のサービスはありますか?
石崎氏:そうですね、一般的に有名な素材投稿型のサービスは競合として考えておりますし、海外では音系のAIサービスも増えてきているので、ベンチマークとしてチェックしております。
Waves Placeは長期的に育てていく前提のプロジェクトだと思いますが、最終的な製品のビジョンはどのようなものでしょうか?
石崎氏:最初にリリースしたAI効果音の生成機能は日々進化させつつ、
Waves Placeの使い方のコツを聞いてみた
筆者もWaves Placeを使用し、いくつかの効果音生成を試してみましたが、必ずしもプロンプト通りの結果にならない場面が見られたため、石崎氏にコツを聞いてみました。
先述した「プロンプトの最適化」については、入力するプロンプトの情報量が多過ぎる場合、かえって逆効果になるケースもあるとのこと。
そのため、プロンプトの最適化を行う場合は、短くシンプルなプロンプトの方が良い結果を得られる場合が多いようです。
また、目的のサウンドに応じて、生成する秒数を調整したりすると結果が改善する場合もあるとのこと。

現状では、狙ったサウンドを生成させる場合は、ある程度のテクニックと慣れが必要ですね。
実際に使用した印象では、スネアドラムやバスドラムなどのシンプルな単音は、比較的上手くいく場合が多かったように感じました。
料金体系

料金体系は月額制サブスクリプションとなっており、月額980円〜利用可能です。
まずは無料で20クレジット/月 使用できるので、とりあえず体験してみることをおすすめします。
さいごに
CASIOが新たに展開する新時代のサービス、CASIO CREATOR ECONOMY。
今回はWaves Placeについて詳しくお話をお伺いしましたが、その内容は非常に革新的であり、同時に開発チームの熱意が伝わってくるものでした。
今回紹介したサービス以外に今後も複数のプロダクトをローンチ予定とのことで、CASIOが描くクリエイター支援の世界には、今後更なる注目が集まりそう。