iZotope Ozone 12レビュー|新機能(IRC5リミッター・Bass Control・Stem EQ)と音源比較・メリット・デメリット徹底検証

長年にわたりマスタリングプラグインの業界標準として高い人気を誇る、iZotope社のOzoneの最新バージョン、Ozone12がリリースされました。

オーディオのダイナミクスを復元する「Unlimiter」、2mixから各パートを分離してEQできる「Stem EQ」、低域の可視化とトランジェント調整が可能な「Bass Control」、アシスタント機能のカスタマイズなど、意欲的かつ先進的なアップデートがいくつも追加されています。

本稿ではOzone12の新機能のアップデート内容と使い勝手について率直な感想をレビューさせていただきます。

※以下内容は全てOzone12 Advanced を使用した際のものです。

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Ozone 12

【新機能ハイライト】

Stem EQ

2mix音源からボーカル、ベース、ドラム、その他の4ステムをAIが自動で分離し、それぞれに個別のEQ処理を適用できます。

Master Rebalanceという3ステムの音量調整機能は既にありましたが、それを進化したような機能になっていて、昔の音源をリマスターするなど2mixを調整したくてもできない場合に活用できる機能になっています。

Bass Control

低域の処理に特化したモジュールで、パンチやサスティンといった要素を視覚的にコントロールし、安定したローエンドを構築できます。

既存のLow End Focusが帯域コントロールに寄った調整ができるのに対し、Bass Controlではトランジェント寄りの調整ができるので、併用することでローエンドの詳細にサウンドメイクできます。

Unlimiter

いわゆる「海苔波形」のように潰れてしまった音源のトランジェントを蘇らせ、ダイナミクスを復元する機械学習を用いた新モジュール。

圧縮され潰れた音の特徴を学習モデルで認識し補正するというアプローチのため、従来のトランジェントシェイパーなどよりも自然な復元が可能になっています。

IRC 5 モード(Maximizer)

Ozoneの心臓部であるMaximizerには、新たなアルゴリズム「IRC 5」が追加されました。

高LUFSでも歪みのないクリーンでオープンなマスターを簡単に作成できます。

Custom Assistant

マスターアシスタントにカスタムモードが追加され、使用するモジュールの選択や目標ラウドネスの指定など、最初からユーザーの好みを細かく制御できるようになりました。

使用感や音質について

マスターアシスタントにカスタムモードが追加されたのが個人的にはかなり好感触でした。

というのも、これまでのアシスタントは「とりあえず全部乗せ」で提示してくるので浅めのセッティングに使うにはどうしても不向きで、ひとまず解析させて不要なモジュールを除く、という作業が発生していました。

カスタムモードであれば最初に使用するモジュールを制限できるので初手で欲しいイメージに辿り着きやすくなっています。

ラウドネスも設定LUFS、ピークレベル、トゥルピーク有無と必要十分な項目で納品環境に応じたカスタムが行えます。

新モジュールに対して筆者の個人的な寸評としては、Bass Controlは痒い所に手が届く上級者向けモジュール、StemEQ、Unlimiterはボーカルミックスなどで2mix調整に戻れない環境への対応、IRC5モードは正統かつ力強いアップデート、という見方をしています。

筆者に特に刺さったアップデートは「IRC5」でした。

新機能の3モジュールはどれも使いやすく活用場面も明確にあるのですが、やはりOzoneを使いたくなるきっかけとしては、Maximizerの性能にあると思っています。

これまでのIRC4もクリアで音圧レベルも高く維持できるアルゴリズムではありましたが、IRC4が搭載されたのはOzone8で2017年リリースです。

プラグインの中でもマキシマイザーは特に競争が激しく、毎年のようにいろんなメーカーから”よりクリアでよりラウド”なプラグインが登場しています。

IRC4は登場から7年以上経過しており、競合製品と比べると物足りなく感じる場合もありましたが、それが今回のIRC5によって見事に払拭どころか圧倒的差をつけたように個人的に感じました。

マスタリングプラグインの『王者の貫禄』を見せつけた、といったところです。

IRC4との違いとしては、微細なトランジェントが埋もれずに前に出てくるところだと感じます。

IRC5はOzone史上初の4バンドのマルチバンドリミッティングを採用してるので、各バンド毎に最適なアタック/リリースを設定できるとのこと。

クリッパーにように歪みで迫力を出すのではなく、あくまでリダクションの制御によるものなのでクリアさを保持しながらトランジェントの残す、という感じです。

競合製品と比較しても原音への忠実さは一歩抜きん出ているように思います。

今後に期待したい部分

前バージョン11の時点で、マスタリングに関わるプロセスとしては必要十分、あるいはユーザーによっては持て余すぐらいに多機能になっていたOzoneなので、今後のアップデートの方向性としては利便性の追求や、増えたモジュールの管理や統合、といったものが予測されていました。

そこから今回の12では新たに3つのモジュールが追加されているので、正直なところ、全部のモジュールを使いこなすには相当な熟練を要すると感じてます。

複雑なモジュールをスムーズに管理するためのAssistant Viewではあるものの、操作できるモジュールは限られているため、操作性の課題があります。

搭載モジュール全てをAssistant Viewで操作できるようになれば利便性が上がるので、今後のアップデートではその辺りを期待したいところです。

また、ひとつひとつのモジュールは強力ですが、CPU負荷の高さも以前からある問題だと思っています。

モジュールを重ねると当環境ではCPU負荷50%を超えることもありましたので、Advancedの機能をフルに使う場合は、マシンスペックも考慮する必要があります。

CPU負荷

モジュールの構成によって負荷は大きく変わります。

モジュール5個使用で20%程度、モジュール10個使用で40%程度になります。

また、IRC5モードだと更に10〜15%ほど負荷が増えます。

  • OS : macOS Sequoia 15.6
  • CPU : Mac M2 12コア
  • メモリ : 64GB
  • DAW : Cubase Pro 14
  • バッファサイズ : 2048samples
  • サンプリングレート : 48kHz
  • ビット解像度 : 32bit float
  • オーディオIF : Prism Sound Lyra1

まとめ

使いやすいカスタムアシスタント、活用場面が明確にある新モジュール、そして技術力の高さを見せつけたIRC5と、正統かつ多方向に進化したOzone12は、これまでになく高い完成度に仕上がっています。

本文では触れませんでしたがマスターアシスタントの精度も向上にしているので、効率的に高品質なマスタリングを行いたい場合にはこれ以上最適なツールはないといえます。

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