音楽プロデューサー くうP氏インタビュー

プロデューサー業から読売ジャインアンツの音響まで、多方面で活躍中のくうP氏にインタビューを行いました。くうP氏プロデュースの最新作品「錦 -NISHIKI-」に使用された機材についても存分に語って頂きましたので、ジャイアンツファンはもちろん、機材ファンも必見の内容に仕上がりました。新宿タワーマンション最上階にあるくうP氏のスタジオ画像付きでお届けします。

くうP氏略歴

バンドサポート、スタジオミュージシャン等ドラマーとしてキャリアをスタート。知人エンジニアのアドバイスなどもあり、Macを使って音楽を制作を行う、今でいう「DTM」を始める。打ち込みの楽しさを知り試行錯誤していく中、少しずつ打ち込みやエディットなどの仕事を開始。F.O.H、Zeebra、DOUBLE、RHYMESTER等のマニピュレータ、ツアーオペレート等を経て、現在は読売ジャイアンツの専属PA、音楽演出を始め、メジャー、インディー問わずアレンジ、プロデュース、ミックスエンジニアと幅広く活動している。

Twitterを見ている方は、くうPさん=ジャイアンツの音響をされている方、というイメージの方も多いと思いますが、主にどのようなことをされているか気になっている方もいると思います。教えて頂けますか?

東京ドームの音響全てを司る、くうP氏専用の眺望。

ジャイアンツでの仕事内容は多岐に渡ります。

東京ドーム内で流れている全てのBGM、試合前、試合中のイベント効果音やBGM選手打席時のテーマ曲、映像演出の音付け、会場内CMの音量、ウグイスやMCマイク、試合中の効果音、審判マイク、ヒーローインタビューなど、要するに東京ドームやジャイアンツ主催試合の地方戦の会場に流れている全ての音を担当しています。

ジャイアンツの音響のお仕事について、楽曲や効果音などは、野球場での使用を想定されたり、普段の楽曲制作との違いなどありますでしょうか?

ドームと名の付く会場で唯一の布屋根で、外と気圧も異なります。

音の回り方も独特で、特にミッドローからローが特殊な回り方をし一度ハウったり回り出すと制御不能に陥ります。

ですので自分が作る効果音やBGM、楽曲はドーム用にローを削り、ミッドローを引き締める、タイトな音にする様に心がけています。

ドラマーからキャリアをスタートさせて、現在は幅広い活躍をされているくうPさんにお聞きします。ズバリ、音楽業界でメシを食うことで大切なこととは?

くうP氏のスタジオにあるドラムセット。

どんな仕事であっても辛い時期は多々あると思いますが、それを乗り越える「好きさ」がないと、仕事として長く続けるのは難しい世界なのかなと思います。

もう一つ、上手く続けるコツだと思っているのが、制作の専門家でないクライアントやアーティストから来る情報量の少ない説明や指示意図を汲み取り、いかにして形にするか?の能力が大切だと思っています。

くうPさんのお気に入りの機材を教えて下さい。

お気に入りのskulpter 500が組み込まれたRUPERT NEVE DESIGNS R6。

ハードウェアでは、ここ最近ではelysiaのskulpter 500がかなりお気に入りです。

Computer Music Japanさんの記事ですので、Pluginをたくさん答えた方が良いと思うのでw

メインキーボードの他にもmicroKORG S MK-1S、Nord Lead 4がいつでも弾けるようにスタンバイ。

好きなPluginはエフェクト、ソフトシンセ共にかなりたくさんあるんですが上げていくとキリがないので、特に好んで使っているいるのは、エフェクトで言うとiZotope全般、IK Multimediaのエフェクト全般、今となってはDTMerさんに賛否が多いですがWavesも結構使います。

リバーブはLX480やAltiverb、ディレイはEchoBoy、珍しい所だとLine6 POD FarmのDelayも結構使います。

EQですとFOCUSRITEのLiquid Mixの為だけに古いMac Proを残していますしFabFilter Pro-Q 2とPro-Q 3も両方入れていて、カチっとしたい時はQ2、ヌルっとしたい時はQ3みたいなイメージで使い分けたりもしています。

コンプはVoosteQのMaterial Compでしょうか?w

他のコンプももちろん使っていますが、Material Compも自由度の高い本当に良いコンプだと思いました。

東京ドームでの音響オペレーションにもVoosteQ Material Compが使用されている。

後は、仕事柄絶対に必要なのでiZotope RXは必須です。

ソフトシンセは、自分の中で現状絶対に無くてはならないのは、Kontakt、SerumAvengerSpireSynthMaster

あと特殊な使い方として、自分の知る限り唯一+−7オクターブベンドが出来る、ReaktorもEDMのエフェクティブな効果で使ったりします。

現在、気になっている機材はありますか?

ただのバンドルとかではなく、ガチの共同開発でNative InstrumentsとiZotopeが作ってくれるソフトシンセが出てくれれば120%買うな、というのと、いずれ出るであろうAPOGEE ensemble3でしょうか。

くうP氏最新プロデュース楽曲「錦 -NISHIKI-」について

くうPさんプロデュースの最新楽曲、錦 -NISHIKI- 聴かせて頂きました!めちゃくちゃカッコ良くて、選手の登場シーンにピッタリだと感じました。

ありがとうございます!

かれこれ10年近くSORGENTIというユニットの楽曲制作には、ミックスやアレンジなどで常に関わってきたんですが、2019年からジャイアンツの選手が飛び出していく時のBGMをSORGENTIと共同でプロデュースしていて今年で3年目、3作品目になります。

配信はこちら→ 錦-NISHIKI-

最初の曲「橙花繚乱」は2019年初頭に制作し、続く「流水桜」は2019年の年末に制作しました。

長めの良いスタジオには複数のモニターが並ぶ。iZotope Spireも確認できる。

今回の「錦 -NISHIKI-」の制作は、世界の状況がまるで違う。

そんな中、チームだけではなく聞いて下さる皆様、更には自分たち自身も鼓舞出来るような、前に進む事を後押し出来る様な力強さを表現したいと思って作りました。

キックのサウンドが目立ってて勢いありますよね。

今回、SNSなどでもキックの音創りをお褒め頂けました。すごく嬉しいです!

メインのキックにはTone EmpireのGoliath V2を導入した事が大きいのかもしれません。

もう一つは、自分はミックスの時に各セクションをBusまとめ(ステム)しています。

ボーカルまとめ、コーラスまとめ、ウワモノまとめ、リズムまとめみたいな感じで、その際、各ステムAuxトラックにBusコンプを挿します。

今回の制作からIK MultimediaのBus Compressorを使ってみました。

このバスコンにはSC HI PASSが付いていて、リズムAuxにこのSC HI PASSで低域にコンプを引っ掛けなくしたのも大きい要因かと思います。

錦 -NISHIKI-で使用された機材などを教えて頂けますか?

まずメインボーカルにはelysia skulpter 500を、コーラスはNeve Portico 511と543を使って録りました。

ソフトシンセは上記で答えさせて頂いたソフトシンセたち、和楽器はKontaktライブラリ、イントロでテーマを弾いてるシンセは10回以上音色変更を経て、最終的にreFX NEXUSとSerumを混ぜて音を作りました。

自分的に面白い点としては、今回初めてベースにUJAM DANDYを使ってみました。

理由としては、ロックっぽい要素を曲に入れたかったのでベースはルートを8分で刻もうと思っていたんですが、打ち込みだとかなり細かいエディットをしないと単調になりがちだと思うんですが、8分をオートで演奏させた際のランダム感が良い感じでした。

ただ全てオート演奏だと自由度がないので、手打ちの部分とオート演奏を使い分けてあります。

MIDI入力デバイスのMASCHINE MICRO、Launchpad Proが確認できる

ボーカルの音創りには、Material Comp、FOCUSRITE Liquid Mix、iZotopeのNectar 3 PlusのEQ、FabFilter Pro-DSなどで極々シンプルに素材を引き出せる様に心がけました。

リバーブは、今回の曲調、テンポ感だとLX480は密度が濃すぎて合わないと感じたので、Native Instruments RC24とiZotope Neoverb、ディレイには同じくNative Instruments REPLIKA XTとWaves Manny Marroquin Delayなどを組み合わせています。

作り始めた当初、ギターはAmplitube 4を使っていたんですが、ミックスの段階でAmplitube 5に差し替え、最終的にギターのトラックは全てAmplitube 5です。

最後に、音楽を生業にしたいと思っている方々へのメッセージをお願いします。

今、世界中が誰も体験した事のない未曾有の危機に立たされ、エンターテイメントも大打撃を受けている状況です。

その事もあり、自分が行おうと思っているプロデュースプロジェクトも滞っており、全ての業種の皆さんが苦しい状況下かと思います。

今後もマイペースではありますが、小難しい事抜きに、少しでも楽しいと思える、楽しんでもらえる音楽活動が出来たら良いなと思っております。

くうP Twitterアカウント

くうP YouTubeチャンネル

くうPプロデュース最新作 錦 -NISHIKI- の配信はこちら→ 錦-NISHIKI-

錦 -NISHIKI- の感想(ゆにばす)

上記にもあるとおり、存在感のあるキックが全面に出ており、楽曲を引っ張っていく感じがめちゃくちゃカッコ良くて心地よいサウンドでした。くうPさんの使用機材のお話を聴いてから聴き直すと更に新たな発見があったり、楽曲制作のストーリーが見えて二度美味しい。また、楽曲の顔にもなっているリードシンセの音色を何度も練り直したというお話は、多くのDTMerに勇気を与えるものではないでしょうか。巨人ファンの方はもちろん、混沌とした今の時代のモヤモヤを吹き飛ばすような楽曲だと感じたので、是非是非皆様ご拝聴頂き、TwitterでくうPさんに感想を送りましょう!

業界をリードするインストゥルメントの製作ツール、Native Instruments「KONTAKT 7」が50%OFF!

詳細はこちら

最新情報をチェックしよう!
>Computer Music Japan

Computer Music Japan

世界中の音楽機材情報を毎日お届け!