Signum Auido BUTE Limiter 2 徹底レビュー

Signum Audio の BUTE Limiter 2 は、透明度の高い音質と正確なピーク処理を備えたトゥルーピーク・ブリックウォールリミッターです。

バージョン1の時から話題になっていて、国内外問わず多くのプロエンジニアの方々から高い評価を得ています。

バージョン2ではインターフェイスの改良と追加機能が実装されたことで更に使いやすくなっています。

BUTE Limiter 2

音・性能・特徴

歪みがなく超透明な音質が特徴とのことですが、実際に試してみると、思ったほど良くないかも?と思われた方もいらっしゃるかもしれません。

先に申し上げると、このBUTE Limiter 2は『音圧上げる用途には不向き』です。

というのも、ゲインリダクションが一定以上になると音質変化があり、音が奥まってのっぺりとしていきます。音圧も一定以上は上げれないような挙動になります。

だからといってBUTE Limiter 2 がイケてないということではなく、ブリックウォールリミッターとしての役割を忠実に守った結果、と感じました。

昨今の『リミッター』と名のつくプラグインには実質『マキシマイザー』の特徴が主になってる製品も多くあります。

そういった製品は、音圧上げに有利なトランジェント処理を施す代わりに音に歪みが生じたり、トゥルーピーク処理で劣化が生じたりします。

対して、BUTE Limiter 2 はリミッターの役割に振り切っているので、音圧上げに必要なトランジェント処理を犠牲にしてでも、超透明な音質を保っているのだと思います。※個人の感想です

そのため、この製品を『リミッター』として扱うか、『マキシマイザー』として扱うかで、印象や評価も全然違ったものになります。

個人的にはトゥルーピーク処理に魅力を感じたので、基本的な使い方と併せて、その辺りを深堀りして紹介したいと思います。動画解説では、より詳細に解説しているので是非そちらもご覧ください。

使い方

基本的な使い方としては、PreGainを上げてリダクションを調整します。PostGainでアウトプット音量を決めれるので最終的な音量はここで調整します。

別の方法として、PostGainからMaxTargetに切り替えて、Thresholdを下げてリダクションを調整する方法もあります。Thresholdを下げたときの方がキャラ付けが強くなる印象です。

どちらの方法でも、大体リダクションが2.5dBを超えたぐらいで音質変化が大きくなってくるので、大きなリダクションはしない方が無難ですね。

また、BUTE Limiter 2 の大きな特徴である「アダプティブオートリリース機能」は、一般的なオートリリースよりも自然に処理してくれるので、ドラムバスや2mixなどダイナミクスが複雑な素材に適しています。

さらにオートリリースの可変幅を任意で変更できるのが他製品にはない強みです。

普通のオートリリースだとリリースタイムが長くなりがちで音が引っ込んでしまいますが、可変幅を速めることである程度回避できます。

リリースカーブは5種類から選べます。微妙な違いですが、Pumpingは明らかにキャラ付けされます。Transparent やNatural で使用するのが基本になると思います。

おすすめの使い方 トゥルーピーク用途

トゥルーピーク(以下TP)とは、デジタルデータをオーディオに変換したときに発生するピークで、DAW上でピークが表示されていなくても書き出すと0dBFSを越えて音割れしてる、ということがあります。

最近はTP対応のリミッターも多くありますが、TP機能をONにすることで音質変化や劣化が発生するものも少なくありません。

対して、BUTE Limiter 2 は軽めのリダクションであれば透明な音質を保ってくれるので、TP処理専門にすることで、性能を活かしきれます。

例えば、Ozone9 Maximizer をメインのリミッターとして使用している場合、Ozone → BUTE の順にインサートしてTP処理だけをBUTEに任せることでそれぞれのプラグインの持ち味を活かす、といった使い方です。

動画ではコンプも併用して音圧を-4.5LUFS付近まで上げた素材に対し、OzoneとBUTEのTP処理の違いを比較しています。

個人的にOzoneのTP処理は高域がざらつく印象があるので、BUTEの方が自然な感じがします。

改善してほしいポイント

ヒストリービューが少し使いづらいと感じました。時間軸を上部で変更できますが、もう少し拡大表示できれば嬉しいところです。

とはいえメーターの動きは機敏で分かりやすいので、いっそのことグラフィック非表示の方がコンパクトで使いやすいかもしれません。

CPU負荷

CPU負荷は軽めです。Ozone9 Maximizer の2/3程度。マスター段だけでなく、各バストラックのレベル管理用途にも使えますね。

  • OS : macOS Big Sur 11.4
  • CPU : 3.6 GHz 8コアIntel Core i9
  • メモリ : 40 GB 2667 MHz DDR4
  • DAW : Cubase Pro 10.5
  • バッファサイズ : 512samples
  • サンプリングレート : 48kHz
  • ビット解像度 : 32bit float
  • オーディオIF : Antelope Discrete 8 SC

まとめ

以下の状況に当てはまる人にはオススメできる製品です。

  • トゥルーピーク対応のリミッターを持ってない
  • 既存のトゥルーピーク対応リミッターの音質に満足していない
  • 透明度の高いリミッターがほしい
  • コスパが良いリミッターがほしい

音圧上げには不向きの面がありますが、Signum Audioの開発者さんのインタビューでは非常にクリーンなサウンドのクリッパー・マキシマイザーも開発中とのことで今後に期待できますね。

ブリックウォールリミッターとしての性能は申し分なく、シンプルな操作性で安価なので非常に導入しやすいプラグインです。

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