発売から17年が経過するも、いまだゲーム音楽ファンからの熱狂的支持を集めるシューティングゲーム「まもるクンは呪われてしまった!」のリメイクバージョン「まものろKAI!~まもるクンは呪われてしまった!~」が2025年9月25日に発売されます。
今回は「まものろKAI!」の発売を記念しまして、80~90年代のゲーム音楽を作らせたらこの人の右に出る人は居ない!といっても過言ではないゲームミュージッククリエイターの安井洋介氏(@yousukeyasui)にインタビューが実現しました。
まものろと言えばYO-KAI Disco、YO-KAI Discoと言えば安井洋介氏と連想する方も多いことでしょう。
今回は、YO-KAI Discoが生まれたきっかけや、「まものろKAI!」で書き下ろされた新曲への想いなどについても存分にお話いただきました。
今回はインタビュー記事3部作の最後となる後編です。
ミックス・マスタリングを手掛けられることもあると思いますが、昔のアーケードゲーム音楽の原曲はエフェクトはないですよね。再現する上で、どういうアプローチを取られていますか
安井氏:先ほどの通り(中編「サンプラーはどうでしょうか?」箇所)サンプリング音源はローファイ処理を行います。
そしてFMやPSG音源は、音質が良くて使いやすいものを選びますが、音質の変わるエフェクトはほぼ使っていません。
空間系エフェクトに関しては、ディレイ効果なら同じ音を小さい音で追いかけて鳴らすデータエコー方式で、少しデチューンをかけたりします。ただラフ段階では同様の効果をエフェクトプラグインでとりあえず入れる事もあります。
リバーブは、ちょっと特殊な考え方ですが、昔のゲームサントラだとゲーム機からレコーディングされた音に残響をつけて作られていた事が多かったので、そういうテイストを狙ってリバーブをかける時もありますね。
プラグインエフェクトはどういったものを使っていますか?
安井氏:全てデジタルで作っているとどうも疲れる音になってしまう印象があって、アナログ感を足したくてマスターにWaves NLSをよく使ってました。最近はVoosteQ Model N Channelなども試しつつ試行錯誤してます。
ビットクラッシュやディレイはCubase付属のものですね。ディレイでデチューンもかける時はNative Instruments REPLIKAやGuitarRigを使う時もあります。
EQ、コンプは、iZotope NeutronかCubase付属のものをとりあえず立ち上げる感じですね。
音の輪郭を出したい時にSlate DigitalのFresh Airもわりと使ってます。
またアナライザーでVoxengo SPANを使ってます。これはスタンドアローン版がないので別のVSTホストアプリに立ち上げているんですが、DAW内でなく別アプリにしているのは、ミックスの参考曲を別のアプリで再生して見れるようにするためです。
音のルーティングは、再生アプリの出力からオーディオインターフェースのループバック機能を使ってホストアプリに入力してます。最近はこれが出来るオーディオインターフェースも増えたようですが昔はアナログケーブルで物理的にループバックさせてました。
ディレイは、エフェクトを使わずにトラックを複数使って音を鳴らすことはありますか?
安井氏:そうですねデータでディレイさせる時は、複数トラックではなく1トラック内のレーンにディレイパートを入れてます。
単純なディレイならイベントの共有コピーを使いますし、元音とは別データを入れる時もあります。
ひとつひとつの作業が職人芸ですね。
安井氏:元々MSXのMMLから音楽を始めた事もありますし、カッチリした音が好きなのもありますね。
ピッチベンドを入れる時も線で繋ぐのではなく、最小限の値しか置かない、とか。
Cubaseだとピッチベンドが上下8192段階なので、ベンドレンジが1オクターブなら半音は683、みたいな値を表にして数値を打ち込んでたんですが、Cubase12のアップデートでこのベンド値をグリッド入力できるようになって数値入力がいらなくなったので個人的に神アップデートでした。
気になっている機材、今後使ってみたい機材はありますか?
安井氏:現在使用しているオーディオインターフェイスは自分的には満足しているんですけど、MOTU M2がとても話題だったので気になっています。
音源だとSERUM 2やNexus 5も使ってみたいですね。また音の良さだけでなく、ロードの速さとかプレビューしやすさなんかもなるべくストレスがない方が良いので、そういう部分にも興味がいきます。
最近だとXLN Audio XOやUVI SynthAnthology 4など、音のブラウジングにAI処理を入れて効率化しようとしている製品もあるのでそういう進化にも期待してます。
あとは、やはり90年代前後の音、Roland D-50、Ensoniq VFX、Oberheim Xpanderといった時代の音が好きなので、そういう音ももっと使っていきたいですね。
楽曲制作、ゲーム音楽への想いについて
ご自身の曲はどこに特徴があると考えていますか?
安井氏の曲の中でも屈指の人気を誇るCounter Strike(ニンテンドーDS用ソフト:英単語ターゲットDS)Trash006 NDS English Training Software – Soundtracks -に収録。
安井氏:作曲面では、昔からキャッチーなメロディ+意外性のあるコード進行が好きですね。
またベースやドラムのグルーヴもこだわる方で、音符の長さを細かめに調整してます。ただこれは昔のゲーム開発事情で考えるとデータ量や手間が増える事になってしまうので、やらない方が良い時もあると思いますが。
なんと、Counter Strikeはプロ野球の応援歌にも使われている。安井氏のキャッチーなメロが万人に受け入れられている証左だろう。
最近良いなと思うゲーム音楽はありますか?
安井氏:やはり自分が好きな90年代前後のゲーム音楽テイストを感じるものが気になるんですが、特に次の方々は、そういうサウンドが作りたくてしょうがない情熱を感じるのですごく刺激を頂いてます。
◆hasuさん 『Path of the Abyss』
https://x.com/hasu2010/status/1739091631989752051
◆はがねさん 『Pip Puzzle』
https://x.com/STEEL_PLUS/status/1839644849714147608
◆Sean Bialoさん 『Power Rangers: Rita’s Rewind』
https://x.com/SeanBialo/status/1866520573037379782
今後の展望を教えてください。やってみたい楽曲やお仕事など。
安井氏:ここしばらく、自分の適性やゲーム業界の状況から、今後は効果音や実装業務のサウンドデザイナーや、サウンド以外への転職も含め悩んでいました。
その間にも色々とご縁があって作曲の仕事を頂けたり、色んな方とお話しをさせて頂いたりしたんですが、ありがたい事にとある会社の方にお声がけを頂いてこれから一緒にお仕事させて頂く事となりました。(この記事が出る頃には公表できているかもしれません)
引き続きゲーム開発に関われる事が嬉しいですし、面白くやり甲斐のある仕事をしていきたいと思っています。
ファンの方へメッセージお願いします。
安井氏:ここまで読んで頂いてありがとうございます。
まずは9/25発売の「まものろKAI!」
また翌日9/26のリリース記念パーティ「YO-KAI Disco Fever」にも出演しますので、ぜひ遊びに来て下さい!
直近にリリースがありましたヘキサドライブ様「
こちらでも安井節が炸裂していますので聞いて頂けたら嬉しいです
INFINITY BULLETS
タイトル画面そのままにしておくと、BGMなしのアトラクトになるの最高にエモいっス…
ブラウン管にロゴとか焼き付きそう🤣僕もBGMで参加させて頂きました。
AppStore、GooglePlayよりぜひ! https://t.co/QWbMPZlL4f pic.twitter.com/VxM7AUxnSa— 安井洋介(偽アカウント) (@yousukeyasui) September 1, 2025
オンゲキ描き下ろし曲「TAIKAN GAME」作りました!
以前、ノーツデザイナーものくろっくさんのYO-KAI Discoへの熱いコメントを拝見してめちゃくちゃ嬉しく…
今回の曲でもすごく面白い譜面を作って下さった事がプレイヤーさんたちの反響から伝わりました。大大大感謝です!https://t.co/0wz2sMshvc https://t.co/VgwTx0CxjM— 安井洋介(偽アカウント) (@yousukeyasui) September 13, 2025
貴重なお話の数々、ありがとうございました!
安井洋介出演の音楽イベントを開催!【まものろKAI! ~ リリース記念パーティー「YO-KAI Disco Fever」】
- 日時:2025 9/26(金) 19:00~
- 場所:パームス秋葉原
- 出演:安井洋介、細江慎治、佐宗綾子、ヨナオケイシ、渡部恭久 -Yack.-
チケット好評発売中! https://t.livepocket.jp/e/yokaidisco/
まものろKAI!〜まもるクンは呪われてしまった!〜(2025年9月25日発売!現在予約受付中)
2008年にゲームセンターで登場し、「呪い」を駆使した独特の駆け引きと、ポップでキュートなキャラやBGMで人気を博したグレフのシューティング『まもるクンは呪われてしまった!』が現行ハードで復活。
ストーリーモードは新たにワイド画面に対応!ギャラリーモードやオンラインランキングも搭載。
歴代ゲームモードや追加キャラクターを全収録し、好きなバージョンのBGMで遊べるカスタム機能と、全BGMが視聴できるサウンドテストを新規実装。
そして、原作コンポーザー・安井洋介による新テーマ楽曲も収録!
安井洋介
安井洋介(@yousukeyasui)
主にゲームの音楽や効果音を作るサウンドクリエイター。
DJとしてイベントにも参加するなど幅広く活動中。
代表作に『まもるクンは呪われてしまった!』、『エスカトス』、『ギンガフォース』、『ナツキクロニクル』他。
まものろKAI!〜まもるクンは呪われてしまった〜(予約受付中)
まものろが現行ハードに対応し復活!さまざまなパワーアップした機能に、最新の楽曲や特典も多数。必見です。
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