【アクトレイザー・ルネサンス】古代祐三氏、quad氏インタビュー(後編)

一世を風靡したスーパーファミコン用ゲームソフト「アクトレイザー」の登場から30年、大幅なリメイクバージョンとして「アクトレイザー・ルネサンス」がリリースされました。

初代アクトレイザーに引き続き音楽を担当したのはもちろん、古代祐三氏(@yuzokoshiro)。

今回は、作編曲を手がけた古代氏、そしてレコーディング、ミキシングを手がけたquad氏(@quad_luvtrax)のお二人にインタビューすることが出来ました。

Computer Music Japanらしく、アクトレイザーにどのようなプラグインが使用されたかなど、機材の話題が多めとなっていますので、かなり濃い内容です。

前後編と機材編、計3回に分けてお届するインタビュー、今回は後編です。

前編はこちら➡︎【アクトレイザー・ルネサンス】古代祐三氏、quad氏インタビュー(前編)

目次

古代祐三氏、quad氏インタビュー(後編)

モニタースピーカーはADAM A7Xをお使いですね。

古代氏:ADAM A7Xは、日比野 則彦さんがスタジオで使用されていて、音が良いなと思っていたんです。

スタジオを作る際にquadさんに相談したところA7Xが良いんじゃないかということで導入しました。

私はあまりスピーカーの聴き比べなどはやらないのですが、業界の評判や知人の勧めなどで決めてますね。

フラットでありつつ、音楽的なサウンドに定評のあるADAM A7X。コストパフォーマンスに優れたモニタースピーカー。

quad氏:ADAMを導入する際に、Genelecの8000シリーズとどちらが良いかという話があったんですが、コントロールルームの特性や、古代さんが既に知っている音ということでADAMをお勧めしました。

もう10年くらい前なのですが、光田康典さん(@YasunoriMitsuda)のスタジオにデュアルウーファータイプのADAMのスピーカーがあったんですけど、ADAMの音を聴いたのはそれが初めてでした。

その時は、リボンツイーターのスピーカーは珍しいなと思っていたんですが、パワードなのに派手でなく、かと言って地味ではない印象で、使いやすいなと。ニアフィールドで使うんだったらA7Xが良いと判断してお勧めしました。

A7Xは、今時のパワードの中ではある意味でおとなしい部類だと思います。Genelecなどと比べると大人しめなのかなと。

関連記事:ADAM Audio A7Xレビュー

モニターとしても素直で分かりやすく、スタジオ定番のYAMAHA NS-10Mと比較してもローが出るので。あとは古代さんから相談があったのが、楽曲制作するときの環境として楽しく作れるものが良いというお話があったので、ある程度鳴るものが良いだろうなとは思いました。

実は古代さんのスタジオにはずいぶん前からお持ちのNS-10Mがあるんですが、そちらは使わずにADAMにしました。

鍵盤を弾いてても楽しく聴けるし、レコーディングのモニタースピーカーとしても機能するという両方の面で丁度良かったんじゃないかなと思います。

私もADAMを使っていて、ベア・ナックル4くらいの時からモニターのアウトプット環境は古代さんのスタジオとほぼ一緒なんですよ。

モニターコントローラーにCrane Song Avocet II Aを使用しているところも同じです。

FM音源でよく使ってるソフトウェアはありますか?

古代氏:G.I.M.I.CのVSTiを使用しています。

G.I.M.I.Cハードに対応していて、プラグインで鳴ったものがそのまま再生できるという優れものです。

FM音源などの本物の音源チップが搭載されたハードウェアG.I.M.IC。

ゲームのシミュレーションという意味ではそれを使用しますが、それ以外は最近そんなに使うことがなくて。

ソルクレスタはガッツリFM音源なのでこちらは、Plogue ChipSound PortaFMを使用しました。

ソフトウェアの作者、David Vienさん(@plgDavid)と繋がって、要望を色々出して改良してもらったんですよ(笑)すごく助かりました。

それと、Plogueから最近DX7のプラグインがリリースされたんですが、すごく出来が良いです。音に関しては最高ですね。

アナログシンセはどうですか?

古代氏:DCOなので純アナログではないのですが、Dave Smith InstrumentのProphet Rev2を使用しています。

古代氏のメイン鍵盤に採用されているProphet Rev2。

弾きやすいということもあってメイン鍵盤で使用しているんですよ。

あとはラック音源のRoland MKS-80を使うことが多いですね。

プラグインよりはハードウェアを使用されることが多いですか?

古代氏:収録絡みのものはできるだけプラグインを外すようにしています。生楽器とハードウェアは音が合うんですよ。ただ、収録以外でハードウェアを使うことは無かったですね。

これから発表する作品で、拘ってハード音源で固めて作ったものはありますが、普段はソフトウェアです。

一番立ち上げるのは、Lennar Digital Sylenth1ですね。エディット早いし、軽いし、ひねくれた音でなければだいたい出ますので。

quadさんはクラブミュージックご専門ですよね。お気に入りのシンセを教えてもらえますか?

quad氏:お気に入りは初めて購入したアナログシンセのJUNO-106、αJUNO-2(MKS-50)、SH-2、CZ-101のような以前から使い慣れているシンセでしょうか。

昔から高価な機種は買えなかったのですが、現在のように値上がりする前に安く購入した機種が多いですね。現行機種だとKORG monologuevolcaシリーズなどもコンセプト、音ともに好きですね。

他には、Rolandのいわゆる「TR-X0Xシリーズ」のリズムマシンも気に入っていて、だいたいありますね。

TR-909は2台、TR-606は3台持っています。TB-303も2台ありますが良い機材は何台あっても良いですね。

808のMIDI改造したものは手放してしまったのですが、あとは持っていないものはTR-505くらいじゃないかと思います。

やはり使用されるのはハード音源ですか?

quad氏:楽曲によってですがソフトシンセもよく使っていて、最近の音色だと、Sylenth1MassiveSerumSPIRE辺りを使うことが多いと思います。この辺は、海外でもよく使われていたり、プリセットも多かったりするので、あえてハードでなくて良い場合、特に今の音楽の場合は寧ろプラグインの方が多いですよね。

TB-303以外は必要に応じて使う感じですね。リズムマシンではハードではTR-909は使用頻度が高いですね。

私の場合は『TB-303で』とオファーされることもあるので、普段からTB-303実機は良く使いますが、それ以外はリクエストがあったり、ハードにした方が良い場合に使う感じですね。ハードシンセは常にリペアしてコンディションを保つようにしています。

TB-303に関してはプラグインも出来が良いですが、私の場合は打ち込みもサウンド面でも実機を使用した方が早い という理由もありますね。

出典:Wikipedia : Roland TB-303

プラグイン、ハードウェアそれぞれにメリットがあるので、音楽的に合っているかという判断を重視していて、 最終的にはケースバイケースで使い分けていますね。

ただ、ソフトからハードに差し替えると、αJUNOなんかでもDCOなのに音太かったんだなと思ったりします。

昔はDCOなんて細いと言われてましたが、今聴いたら結構太くて存在感もあるのでバランスも変わっちゃうくらいです。

古代さんのスタジオは、アナログシンセもFM音源もなんでもあるので、録音は99%実機に差し替えてしまいますね。

実機の場合はモジュレーション系などのエフェクタやEQ、リミッターで音作りしてシンセダビングしています。シンセやリズムマシンもただ録音するということはせず、こうした工程を経て一つの音色が完成していきます。その方が生楽器との混ざり、繋がりも良かったりします。

あとは、エディットが両手が使えて早いというところも、ハードウェアの直感的で良いところなのかなと思います。

30年前にゲーム業界を震撼させた初代アクトレイザーの音色について質問です。「サンプリング元のシンセサイザーは、Roland SC-55だったように記憶している」と古代祭りのインタビューでお見かけしたのですが。

古代氏:うーん、SC-55ではなかったんじゃないかなと。当時持っていたシンセは限られているんですよね。KORG M1と、クインテットさんのオフィスにあったのがYAMAHA V2かV50のどちらかで、Vシリーズだったと思うんです。

Vシリーズのハープの音が全く同じなのでここから録ったんだなと。

多分、金管類はKORG M1のオーケストラ拡張カードだと思うんですよ。当時唯一持っていたシンセがM1だったので。

中学生の時にKORGのDELTAを買って、それ以来ずっとシンセ持ってなかったんです。それからNEC PC-8801で作るようになったので。

古代氏が現在も所有しているKORG DELTA。最近メンテナンスしたとのことで状態も良さそう。ちなみに、KORGのロゴに貼ってあるステッカーは、当時13歳の古代氏が貼ったもの。

古代氏所有のPC-8801。様々な名曲を生み出してきた伝説のマシン。

ちょうどM1が出た頃にシンセが欲しくなって買ったので、M1がファーストシンセに等しいんです。

音色も確認しましたけど、多分M1ですね。

出典:Wikipedia : Korg M1シリーズ

quad氏:SC-55はアクトレイザーの1年後の発売なので、SC-55ではないでしょうね。

(一同納得)

古代氏:確かに、あんな小さかったらクインテットに持っていったはずなので、やはりSC-55では無いですね(笑)

quad氏:サンプラーは無かったんですか?Roland S-330とか、S-550とか。

古代氏:実は細江慎治さん(@shinji_hosoe)からS-330を借りてるんですよ。その中のライブラリを何かで結構使ってるんですけど、過去の曲を分析していて出どころが分からない音がほとんどS-330ではないかなと思ってて(笑)

出典:Vintage Synth Explorer

アクトレイザーのオーケストラヒットとかも、多分S-330じゃないかなと。

他にないので。細江さんから借りれたからアクトレイザーは出来たみたいな(笑)

2000年頃に、このまま音楽制作を続けるのか、ゲーム制作会社の方に軸足を置くのか、悩んでいた時期があったと読みました。当時は苦悩もあったかと思いますが、何がターニングポイントになって現在に至るのでしょうか?

古代氏:湾岸ミッドナイト MAXIMUM TUNEと世界樹の迷宮です。

動画は湾岸ミッドナイトシリーズ最新作、MAXIMUM TUNE 6。

私は駆け出しの頃は割とラッキーだったんですよね。業界が伸びていく時期で、ゲーム音楽家というかちゃんと音楽をやっている方も少なかったので、入り込める隙がいっぱいあったんです。

たまたま近くにFalcomという素晴らしい会社があって、そこにたまたま私の曲を気に入ってくれた社長がいて、そこのゲーム(イースなど)がヒットして。

古代氏の代表作のひとつイース。1987年にリリースされた伝説のゲーム。

出典:日本ファルコム : ミュージックフロムイース

ある意味、うまくいくのが前提みたいな感覚がどこかにあったと思うんですけど、その感覚が10年くらい経って通用しなくなった時期があったんです。

クライアントは自分を指名してきてくれているのに、自分が作ったものがあまり気に入って貰えてないんじゃないか、みたいな。

先方が求めるものと、自分が求めるものがズレてしまっていたんですよ。最初は自分が若かったせいもあって、気持ちが制御できなかった。

自分は思い通りに作ってきて実績を積んできたのに、なんでそれが上手くいかないのか悩んだ時期で七転八倒しました。

ゲーム会社もやってきたので、そちらに力をいれなきゃなっていうこともあったんですが、元々はその悩みが大きかったんですよね。

そこでたまたま、湾岸ミッドナイトの企画が来たということと、世界樹のプロデューサーである新納さんが私の昔のサウンドをすごく気に入って下さってて、オファーがあったんです。

世界樹の迷宮シリーズの最新作である世界樹の迷宮X(クロス)。シリーズの楽曲はすべて古代氏が手がけている。

そこで追及したことが、イースとかソーサリアンを作ったことの延長線上にあると改めて認識して、とにかくやってみようと。

その二つの作品が幸運にも評価を頂いたので、ひょっとしてこういうことなのかな?と自分の中で気持ちが入れ替わって、再認識できましたね。

やはり世間の声は気になりますか?

古代氏:当時はそこまでインターネットが無くて、草の根BBSとかの情報は見てました(笑)

ボロクソ書かれたりもして、当時は若いから気にするんですよね。でも、そのことよりもクライアントとの関係っていうのがうまくいってないんじゃないかなっていうのがショックが大きくて、そこから反省することが多かったです。

今の方がTwitterで知りたく無いことまで色んな情報を見れてしまうので、ある意味若い人は辛いだろうなって思います(笑)

常に最先端、新しい事にチャレンジしてイノベーションを起こし続ける原動力、それは好奇心が強いのか、戦略的に新しいことに取り組んでいるのかどちらでしょうか?

古代氏:両方です。基本的に新しいもの好きで、同じことを繰り返すのが性に合わないんですよね。

今は、ジャンル的には新しい、新しくないというのは関係なくなってきていますが、あえてみんながやってない事をやるとか、もうちょっと先を見たブームを想定してやるとかは自分のモチベーションになってますね。

ブームを先取りするという部分で、Twitterなどでのダイレクトな反応というのは、そういった意味では良いですね。

古代氏:そうですね、非常に参考になります。ただ、皆んな良い事しか言ってくれないから、そこは注意しないといけないなと思ってます(笑)

そこで昔の時代の反省が活きてて、”そうは言ってもそうでない人もたくさんいる”ので、自分の根っこは見失わないようにしないといけないな、っていうのはその時の経験があってかなと。

長年に渡って大量のアウトプットをし続けるには、インプットが不可欠かと思います。ご多忙の中インプットする工夫などはありますか?

古代氏:昔は何か音楽を聞きたいと思ったらレンタル屋さんに行ったり、自分で購入するというのが普通のことでしたけど、今はYouTubeなどで何でも聞けるじゃないですか。

しかも好きな時間に一瞬で聞けるので、インプットする時間を作るっていうのに苦労していないんです。

音楽を作っている時間以外はYouTubeで何か見てるか聞いてるか、あるいはTwitter見てるか(笑)

結構、音楽的なこと以外ではTwitterはすごく助かってて。ゆにばすさんのセール情報に私やられまくってるんですけど(一同笑)

ソフトウェアを作ってる方とも、何かをつぶやくと繋がれたりするんですよね。なのでめちゃくちゃ助かってて。それに後押しされている部分がすごく大きくて、そういった意味ではTwitterもインプットのなひとつの源です。

あえてインプットする時間を作らなくちゃな、というのは昔ほど意識していないですね。

こういうの作って下さいってオーダーがあったら、作る前にザッと聴くんですよ。で、あまり聴きすぎちゃうと染み込みすぎちゃうので、曖昧な状態にして作ると割と良い感じのオリジナルになるっていう(笑)

これは、Twitterの良いところでもあり、悪いところでもあるんですが、同じコミュニティで形成されるので情報が偏るんですよね。それが良くないので、自分の子供から流行っているものや、気にっているものなどをチェックしてます。全然文化が違うので(笑)

それを知った上で、自分はこうする、という風にしないとバランスを欠いちゃうのではないかなと思うので、そこは意識しています。売れるものは絶対に若い文化というのは揺るぎないので。

流行を知る事で、こういう流れが来てるのであえて先回りして…ということもできますよね。

両方を知らないと思い切って出来ないんですよね。

quadさんはいかがですか?

quad氏:情報のインプットはネットの割合が高くなりましたね。

クラブミュージックは比較的早い段階からアナログ盤から配信に変わったので、音楽配信サイトから購入しています。他にはYouTubeやサブスクのSpotifyなど便利な媒体が増えて、最近の音楽の買い方、聞き方は相当変わったと思います。

サブスクの良いところは、新しいものも古いものでもサブスクで流れるようになったので、「昔の曲知りたいな、聞きたいな」という場合でも、そういうサービスを利用すれば、現在入手できない曲もしっかり聞けますね。

私の場合はクラブミュージックが自分のメインジャンルなので、海外の情報はコミュニティやフォーラムで毎日チェックしています。

ある意味ローカルで、その国々の動きをチェックしておかないとチャートに出てこないアンダーグラウンドなサウンドをチェックできるのはありがたいですね。

昔は渋谷のレコードショップに行って、洋書を読んでチェックしてましたけど、今はネットで海外のインタビューやレビュー記事を見ています。

レコーディングもそうで、ネットのない時代はプロになって、スタジオワークスキルを学ぶくらいしか方法がありませんでした。実際、私も自分のトラックのミックスを良くしたいと思ったのがプロのレコーディングエンジニアになった動機の一つでもあります。

本は基礎知識などはある程度身につくと思いますが、実際は現場ごとに違いますからね。

今は、外国人日本人問わず、テクニックやセッションの動画がYouTubeで公開されているので、マイキングやどういう風にアウトボードを使っているかなど、手元が見える点でも良いですね。

海外の人たちの手法はなかなか見る機会が無いので凄く価値があるんですよ。

やはりこういう使い方をするんだ、自分の考えが合ってる合っていないというのも含めて検証などができます。

昔はレコーディングの写真から想像するしかなかったですが、動画は音も出て動いているので、仕事の面でも制作の面でもわかりやすいので有り難いですね。

インタビュー(機材編)に続く。近日公開。

古代祐三

古代祐三@yuzokoshiro

主にコンピューターゲームの音楽を手がける作曲家、ゲームプロデューサー。 ゲーム制作会社株式会社エインシャント代表取締役社長。 代表作に『イース』、『イースII』、『ソーサリアン』、『アクトレイザー』、『シェンムー』、『湾岸ミッドナイト MAXIMUM TUNE』、『世界樹の迷宮』他。

■あのアクトレイザーが、数々の追加要素とともにリマスター!プレイヤーは“神”として地上に復活し、荒廃した大地を再び人々の手に取り戻すべく立ち上がる!

アクトレイザー・ルネサンス絶賛発売中

■1980年代にリリースされ人々を熱狂させた名作『ムーンクレスタ』『テラクレスタ』の魂を受け継いだ、新たなる自在合体シューティングゲームの最新作。

ソルクレスタ 2021年12月9日発売

quad

quad@quad_luvtrax) 

レコーディング・Mix・楽曲制作をはじめ、マスタリング、PA、スタジオプランニング等幅広い分野で活動。リモート環境でのオンラインミックスダウン、オンラインマスタリングも対応しています。

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