Three-Body Technology Kirchhoff-EQレビュー

Three-Body Technologyからデジタルとアナログの良いトコ取りな32バンドパラメトリックEQ、Kirchhoff-EQがリリースされました。

Three-Body Technology は中国のデベロッパで、これまでにギター音源や、中国の民族楽器のインストゥルメントをいくつかリリースしています。

筆者自身、ほとんど馴染みがなかったのが正直なところですが、今回紹介する「Kirchhoff-EQ」のスペックには驚かされました。

デジタルEQとして考えうる機能は全部盛り込んだと言っても過言ではないほどの高性能かつ多機能ぶりで、今後のニュースタンダードになり得る製品だと思います。

Kirchhoff-EQ

音・性能・特徴・使い方

本製品には多くの機能と特徴がありますが、ざっくり表現すると、『Fabfilter Pro-Q3 の強化多機能版』といえます。

Pro-Q3は筆者も現時点でメインツールとして使っているのですが、外観や機能面において、Pro-Q3でできることはほとんど可能になっていて、プラスで独自の特徴もふんだんにある、という感じです。

決定的な違いとしては、Kirchhoff-EQではアナログタイプのカーブを扱えるということですね。

数多くの機能を備えているKirchhoff-EQですが、ここでは筆者が特筆したいポイントを大きく4つ紹介します。

41種類のフィルタータイプ

Kirchhoff-EQ には、デジタルEQのカーブ11種類に加え6機種30種類のアナログEQのモデリングカーブが備わっています。

Type E、British N などの表記で、分かりやすくノブの形も変わるのでモデリング元をイメージしやすくなっています。

アナログモデリングをフィーチャーしたEQは多数存在していますが、UIも本家に寄せていることが多く、アナログEQのカーブを視覚的に把握できるのは新鮮な感じがします。

また、アナログモデリングのカーブを選択することでデジタルEQで起こりがちな『細かいQ幅を使いすぎて音が細くなる』ことも少なくなりますね。

高性能なダイナミックEQモード

Kirchhoff-EQ の大きな強みとしてダイナミックEQモードが搭載されています。

アナログモデリングのカーブにも適用できるので、正にデジタルとアナログの良いトコ取りなイコライジングが可能になっています。

ダイナミックEQの設定も詳細に可能で、”Detect/Relative”機能によって動作のトリガーとなる帯域を任意に決めれたりと、かなり自由度の高い設計になっています。

圧倒的な低歪みと低ノイズを実現

Kirchhoff-EQ には、いくつかの技術によって圧倒的な低歪みと低ノイズを実現しているとのことです。

例えば、従来のフィルター構造は低周波数と高周波数でサウンドが異なるのですが、Kirchhoff-EQでは”Psychoacoustic Adaptive Filter Topologies” と呼ばれる技術でフィルター構造の違いによるサウンド差をなくしているとのことです。

また、ダイナミックEQモードでも高度なDSP技術によって普通なら発生してしまう倍音ノイズの低下を実現しています。

実際に操作した際も、自然でクリアかつシャープな音を体感できますし、積極的なセッティングにしてもサウンドバランスを崩すことなく自然なサウンドに仕上げてくれます。

世界初117bitプロセシング

既存のプラグインの内部処理精度は64bitが標準ですが、Kirchhoff-EQ は独自技術によって117bit動作に切り替えることもできます。

正直、聴いた感じの音質差はごく僅かなんですがデベロッパの高い技術力と開発姿勢には好印象です。

その他、独自のMixPhaseModeやオーバーサンプリングなど高精細な処理をするための機能が至れり尽くせりです。

改善してほしいポイント

フォントが全体的に小さくて見づらさがあるので改善してほしいですね。

また、操作感についても好みが分かれるところで、所狭しと並んでるパラメータを細かく設定していくことになるので、直感的な操作が好きな方には受け入れられない感があります。

UIの作り込みは良くも悪くもプロ用ツール、といった印象です。

また、カーブポイントを右クリックして操作できるパラメータがカーブの種類だけなので、スロープやダイナミックモードON/OFFなどアクセスできる項目が増えても良いかなと思いました。

CPU負荷

CPU負荷は軽めの部類です。10個挿したときにCPU使用率5%ほどでした。(Pro-Q3は同条件で2%ほど)

OS : macOS Big Sur 11.4
CPU : 3.6 GHz 8コアIntel Core i9
メモリ : 40 GB 2667 MHz DDR4
DAW : Cubase Pro 10.5
バッファサイズ : 512samples
サンプリングレート : 48kHz
ビット解像度 : 32bit float
オーディオIF : Antelope Discrete 8 SC

まとめ

少し前にSonnoxからClaroという高性能EQがリリースされましたが、あちらがより直感敵操作を重視しているのに対して、Kirchhoff-EQ はプロ用ツールとして機能性を全面に押し出している印象です。

パラメータが多く初見で全部を把握することは難しく、特にダイナミックEQの詳細設定はマニュアル必読な感じです。

とはいえ、高性能と多機能さは現行トップクラスで価格も定価149$と導入しやすいので、メインEQ候補として申し分ないスペックだと思います。

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