Three-body Technology Kirchhoff- EQ開発リーダーインタビュー

中国のデベロッパー、Three-body Technologyのプラグイン開発責任者である、萌克氏にインタビューすることができました。

話題のEQ、Kirchhoff-EQについてじっくり語って頂きました。

目次

Kirchhoff EQ開発リーダーインタビュー

萌克氏:Three-body Technology開発チームのリーダー、萌克(Meng Ke)と申します。

この度ご取材いただき、とても光栄です。

Three-body Technologyはどのような会社ですか?

出典:Three-body Technology公式サイト

萌克氏:私たちは、音楽やプログラミングのマニアックの集まりです。

インストゥルメントチームとエフェクターチームは同じですか?

萌克氏:チームは二つに分かれていて、それぞれレコーディングとプログラミングを担当していますが、メンバーたちが互いに入れ替えたりすることもあります。

全員が両方の技術を身に付けていますので。

Kirchhoff-EQを開発した理由は何ですか?

萌克氏:皆さんのご存じの通り、EQは最も基礎的なオーディオエフェクトであり、ほとんどすべてのエフェクトに使われるものです。

EQで満足できる音質を作れないと、ほかのエフェクターで良い音を出せるわけがないと確信しているので、やるなら限界までやり抜こう、と。

EQに関するアルゴリズムに突破口を探すのに長い時間をかけましたが、幸い良い結果を得られました。

Kirchhoff-EQの名前の由来は何ですか?

萌克氏:ドイツの物理学者 Gustav Robert Kirchhoff の法則からインスピレーションを得たのです。

電気工学の先哲方の法則があるからこそ、今日の私たちが発達したハードウェアやソフトウェアで音楽を創ることができます。

それらの法則を使う度に、巨人の肩に立つように感じますので「Kichhoff-EQ」と名付けたのです。

萌克氏の作業デスク。モニタースピーカーはAvantone CLA-10A。日本アニメのキャラクターフィギュアが飾られている。

Kirchhoff-EQと他の EQ の違いは何ですか?

萌克氏:音質が良いのに、コントロールがどうしても馴染まないEQを使ったことがあります。

逆に操作はしやすいが、理想的な音を出せないものもあります。

他のEQと比べ、Kirchhoff-EQが持つ最大な特徴は、できる限り多くの面に配慮を加えていることでしょう。

コードを書きながら「自分でこれを使ったら満足できるのか」「無人島に持っていくならこれを選ぶのか」と、考えていました(笑)

渋いシンセサイザーですが、Korg MS-20を1台所有しています。それをプレイする度に、いつも新しいインスピレーションが浮かんできます!

なので私はずっと「デバイスには魂がある」と確信しています。様々なソフトにそれぞれの魂が宿っています。

Kirchhoff-EQが”空っぽなマシン”にならないために、私たちは大量な努力や情熱を注ぎました。

ユーザーに使われる際に、Kirchhoff-EQは必ず最大のインスピレーションをお返しできます。

開発で苦労した点はありますか?

萌克氏:開発中に遭遇した最大な難題は「音質」と「アルゴリズム」との繋がりです。

フィルタには多様なアルゴリズムがある一方、アルゴリズム面で音質について検討する文献はあまり存在しないのです。

「音質」というのは一人ひとりによるものですからね(苦笑)

そのため、私たちは古典的なアナログとデジタルEQの実現方法を研究し、複数の国からのユーザーに聴き比べテストを依頼し(コロナ禍ではかなり難関)膨大な時間をかけました。

そして、2021年初頭にサウンドの方向性がようやく定着しました。

今後、Kirchhoff-EQのユーザー様が増えていくと、様々なアドバイスをいただくようになると予想されるので、音質に関する調整機能を開放し、その選択肢をユーザー様にも任せようと検討しています。

Kirchhoff-EQの上手な使い方を教えてください。

萌克氏:どんな場面でも活躍できると思いますよ!(笑)

ただし、Kirchhoff-EQを基準のデジタルEQにした上で、ユーザー様がお持ちのもっと個性的なハードウェアEQ、またはEQソフトと組み合わせて利用するのがお勧めです。

新作プラグインのリリース予定はありますか?

萌克氏:Kirchhoff-EQが発売してから、巨大な支持をいただいています。(もう一度ユーザー様に感謝を表したい)

ただいま複数のアップデートを準備中です。お楽しみください。

これからは、ここ数年に積み上げたサンプラーやエフェクトの研究を活用した、新しい音源を開発する予定です。

参考記事:Three-Body Technology Kirchhoff-EQレビュー

中川統雄氏からの質問及び要望

ここからは、日本を代表するEQの専門家である作曲家の中川統雄氏(@raiteisabota)にご協力を頂き、質問と要望を頂きましたので、そちらをご紹介します。

萌克氏:中川様、ご質問ありがとうございます!交流ができて嬉しいです。

117bitボタンは結局何をしているのか?どうしてこの値になったのか?このボタンの目的は何なのか?

萌克氏:117bitは、私たちが音質に対する妥協しない試みです。

開発の過程で、Round-Noiseが音に大きな影響を与えることに気づきました。

32bitの下でRound-Noiseが特に著しいので、他のEQと同じく64bitで進めていました。

しかし、64bitより高ければ、音はどう変化するのだろう、と私たちは疑問に持っていました。

ある日偶然に「double-double」という数学技法が目について、それを使って2つの64bitの浮動小数点数を1つの117bitの数字に転換できることに気がつきました。

つまり、64bitの2倍以上の精度が実現できるというわけです!

複雑な楽曲の場合、117bitは64bitと比べて、音質上に明らかな違いが聴こえます。

リニアフェイズ周りのタップ数やレイテンシーを増やせる選択肢が欲しい

萌克氏:仰る事はとても理解できます!

今後は、リニアフェイズモードにより多くのレイテンシーオプションを追加するかもしれませんが、今より長いものは難しいですね。

それはPro Toolsの遅延補正に制限があり、その制限を超えると遅延補正の作用が失ってしまうからです。

萌克氏:主観的な聴き比べテストを通して、いくつかの長さを選びました。

その基準は、Lowでディレイが低い状況で全体的な調整を行え、Highでディレイがひどくない前提で細かい調整を行えることです。

窓関数の選択できるようにする予定はありますか?

ここ最近は、カスタムテーマなどの新機能によるディスプレイ不具合などの修正に力を入れています。

安定性を上げてから、窓関数オプションを含む、音質に関わる選択肢に重心を置く大型アップデートを実施する予定です!

楽しみにしていてください。

実機のエミュではなく、トランスセレクト出来るモードがあれば最高ですね。(AD2077にMODしたMARINAIRや超レアなNeumann/WSW/Telefunkenトランスで協力しても良いですよ)

萌克氏:ご意見に完全同意します!!

私自身もあらゆる渋いデバイスやカスタムデバイスのマニアです。

実は昔、東京にかなり滞在していました。その間、コンディションが完璧な古いデバイスやデリケートなカスタムデバイスを鑑賞したことがあります。

日本にいろんな達人がいらっしゃると知っていますが、実際に会えるチャンスがなかなか得られないです。

トランスセレクトは、EQの前段に置いたり(インプット)後段に置けたりするとより良いですね。

萌克氏:トランスフォーマーや真空管など、非直線性回路の部品のエミュレーティングは、今後の開発の重点の1つです。

修行を積んで、技術が成熟するまでまだ時間が必要です。

人気デバイスをはもちろん、各種カスタムデバイスのエミュレーティングも開発予定です。

折り返しノイズ対策のローパスフィルターの選択肢が欲しいです。

萌克氏:ローパスフィルタはトーンに影響を与えるからこそ、デフォルトではサンプリングレートを高めずに、特別な方法を使ってオリジナルのサンプリングレートでアンチエイリアスを行います。

2xボタンを利用する際のみに、サンプリングレートが上昇し、私たちがオーバーサンプリング時に最適であろうと選んだフィルタで行われます。

確かに、ローパスフィルタはそれぞれ独特なスタイルを持っているので、今後ユーザーに異なるローパスフィルタを選択できるようになる可能性はあります。

Fab Filter Pro-Q3のようにワンクリックでEQポイントを作成することはできないのですか?

萌克氏:良いご質問ですね。実は多くのユーザー様から要望を頂いています。今後のアップデートで、その機能を追加する予定です。

また多様な需要に応じて、より自由なカスタマイズ機能も開発していきます。

Three-Body Technology

Kirchhoff-EQ製品ページ

Three-Body Technology 公式Twitterアカウント

Three-Body Technology 公式Facebook

中川統雄氏

ピアニスト入江一雄氏(@kazustin49)による、中川氏作曲のThe secret of the Antikythira。

楽譜が発売予定ですので、リリースされましたら是非チェックを。

Twitterアカウント @raiteisabota

ブログ 中川統雄のみみにっき

SoundCloud 中川統雄のみみにっき

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